隣のブースには人だかりができているのに、うちの前は素通り。展示会で一度これを味わうと、装飾の話は急に切実になりますよね。
ブースの装飾は、「遠くから気づかせる」と「近くで伝える」の2段構えで組みます。遠くに効くのは壁面上部のグラフィック・照明・映像。近くに効くのは展示台まわりと床です。
そして、どの装飾にも共通する前提がひとつ。防炎など、会場のルールに合った素材を使うことです。
この記事では、装飾のアイデアを場所別に整理して、おしゃれに見せるコツと見落としやすいルールまで、ブースの制作・施工を手がける立場からまとめました。出展準備全体の流れとレイアウトの考え方は展示会ブースの作り方でどうぞ。
展示会ブースの装飾は何のためにする?
飾るためではありません。遠くから「自分に関係ありそうだ」と気づかせるためです。
来場者は、見るものをある程度決めて会場に来ます。それ以外のブースは、看板・ブースの作り・並んだ製品を遠目に眺めて仕分けするだけ。予定になかったブースに足が向くのは、大きく、ひと目で内容が分かるときです。
もうひとつ、来場者の本音があります。ブースに近寄ると話しかけられるので、そもそもあまり近寄りたくない。自分が来場者の側に回った日を思い出すと、心当たりがありませんか。
だから「近づかないと何の会社か分からないブース」は、中身を知られる前に素通りされます。考える順番は、まず「遠くの人に何を気づかせるか」、次に「立ち止まった人に何を見せるか」。色や素材の話はそれからです。
人が集まる展示会ブースは、メッセージが1つ
設営や撤去で会場に入るたび、人が集まるブースを観察してきました。共通しているのは、掲げるメッセージやキャッチコピーが1つに絞られていることです。
作る側が「大きく作ったつもり」の文字や造作は、会場で何百というブースと並ぶと意外と目立ちません。これ、本当によくあります。キャッチコピーをあれこれ並べても、歩いている人にはどれも刺さらない。
球場の応援と同じです。全員がバラバラに叫んでも外野までは届かず、声が揃った一言だけが遠くまで通る。壁面に何を大きく載せるか迷ったら、まず「1つに絞れているか」を疑ってみてください。
チラシやノベルティの配り物も、同じ理屈で動きます。何をやっているか分からないブースで配ると、「営業されそう」とかえって避けられる。遠目に内容が伝わっていれば、受け取ってもらえます。配る前に、まず分からせる。順番はこれだけです。会期前の告知から当日の見せ方までを通して組み立てたいときは、イベントの集客方法もあわせてどうぞ。
装飾ではありませんが、もうひとつ差がつくのがスタッフの動きです。興味がありそうな人は、遠目にも分かるもの。見つけて声をかける体制のあるブースには、人が集まります。
逆に、既存のお客さんの対応で手一杯だったり、元気なくただ立っているだけだと、興味を持った人でも立ち寄りにくい。声かけの言葉や持ち場の分け方、会期前の案内まで含めた集客の動きは展示会の集客方法に、当日の受付や声かけを外部スタッフに任せる場合の頼み方はイベントスタッフ派遣の記事にまとめています。
場所別・展示会ブースの装飾アイデア
装飾の主な舞台は、壁面・照明・床・展示台・映像の5つ。全部をやる必要はなく、ブースの目的と予算に合わせて効く場所から選びます。
| 場所 | 主な手段 | 効く距離 |
|---|---|---|
| 壁面 | 壁面グラフィック・タペストリー | 遠距離(通路の先から) |
| 照明 | スポットライト・面で照らすライト | 遠〜中距離 |
| 床 | パンチカーペット・フロアシート | 近距離(ブース前) |
| 展示台・カウンター | 展示台の高さ・色、カウンター正面のロゴ | 近距離 |
| 映像 | モニター・LEDビジョン | 遠距離 |
壁面 — グラフィックとタペストリー
もっとも面積が大きく、遠くまで届く装飾が壁面です。「遠くから気づかせる」の主役はここと考えてください。
定番は、壁一面に印刷シートを貼り込む壁面グラフィック。写真やキービジュアルを大きく使えるので、ブースの世界観を一気につくれます。コストを抑えるなら、既存の壁パネルに大判のタペストリー(布製の垂れ幕)を掛ける手もあります。
どちらの場合も、上部3分の1は「遠くから読む場所」。先ほどの話のとおり、ここに置くのは絞った1つのメッセージと社名だけです。
照明 — 明るさは、それだけで人を寄せる
会場の基本照明だけのブースと、スポットライトを足したブースが並んだら、人はどちらへ流れるでしょうか。明るい方です。
展示物にはスポットライトを、壁面グラフィックには面で照らすライトを。電球色か白色かでも印象が変わります。費用対効果は、装飾のなかでも高い部類でしょう。
ひとつだけ注意を。電気は会場への申請と工事が必要な設備なので、数と位置は図面の段階で決めておいてください。
床 — 1面変えるだけで「区画」が「お店」になる
床、忘れられがちなんです。通路と同じ床のままだと、ブースの領域が曖昧に見えます。
パンチカーペット(展示会でよく使われる薄手のカーペット)の色を通路と変える。たったそれだけでも空間にまとまりが出るのだから、床は費用のわりに働き者です。木目調のフロアシートやタイルカーペットまで上げれば、質感はもう一段変わります。
展示台・カウンター — 製品の「見え方」をつくる
展示台は、置く高さと背景で製品の見え方が決まります。目玉の製品は胸の高さ、手に取ってほしいものはやや低め。台の色は、製品より目立たない無彩色が基本です。
カウンターは受付と立ち話の拠点になる場所。正面にロゴやグラフィックを入れておくと、写真に撮られたときにも社名が残ります。
映像 — 近寄らなくても伝わる、唯一の「動く」装飾
人の目は、動くものに引かれます。しかも映像は、遠くからでも内容まで伝えられる。「近寄りたくない来場者」に中身を届ける手段として、大判のグラフィックと並ぶ主力です。
モニター1台の設置から壁面いっぱいのLEDビジョンまで、規模はさまざま(レンタル料金の目安はLEDビジョンの価格の記事にまとめています)。
どの場合も、映像は「音がなくても伝わる内容」にしておいてください。会場は騒がしく、音声はほぼ届きません。

おしゃれなブースに共通する3つのコツ
装飾は、足すより引く。洗練されて見えるブースには、共通点があります。
1つ目は、色数を絞ること。 ベースの色+コーポレートカラー+強調色の3色程度に抑えると、まとまりが生まれます。伝えたいことが多いブースほど色が増えがちですが、色が増えるほど、どれも目立たなくなる。悩んだら減らす方が安全です。
2つ目は、余白を残すこと。 壁面を文字と写真で埋め尽くすと、遠目には「ごちゃごちゃした壁」にしか見えません。
キャンプ場で写真映えするのは、道具を全部並べたサイトではなく、焚き火台ひとつを主役にしたサイトですよね。壁面は遠距離用のキャッチコピーに絞り、詳しい説明は手元の配布物や商談席に持たせる。役割分担ができているブースは、それだけで上品に見えます。
3つ目は、素材感を揃えること。 木目調でまとめる、白とアルミでまとめる、布で柔らかくまとめる。素材のトーンが揃っていると、同じ予算でも仕上がりの印象は大きく変わります。既製の什器を使うときも、色と素材を装飾に合わせて選ぶと「借り物感」が薄れます。
装飾の前に確認したい会場のルール
展示会の装飾には、会場と主催者のルールがあります。デザインが決まってから引っかかると手戻りが大きいので、先に押さえておきましょう。
まず防炎です。 装飾に使いたい素材が布・紙・木のときは、「防炎ラベル付きか」を選定の条件に加えてください。
展示会場は消防法の規制対象になっており、幕・カーペット・展示用合板といった装飾素材には防炎性能が求められます(制度の詳細は公益財団法人日本防炎協会の解説・2026年8月21日確認)。
デザインがどれだけ良くても、素材がルールに合わなければ会場に掲げられません。申請まわりも含めた出展準備全体の注意点は、展示会ブースの作り方で解説しています。
次に高さ制限とはみ出しです。 装飾の高さの上限や、小間の境界からはみ出してよい範囲は、展示会ごとに出展規程で決められています。上に伸ばす装飾や吊り看板を考えているなら、規程の確認が先です。
最後に、隣と裏への配慮です。 隣接する小間との境界壁は、自分のブース側だけでなく相手側からも見えます。
多くの展示会で、境界壁の裏面(隣ブース側)の処理や、一定の高さを超える壁面の背面化粧が求められます。デザインは「自分の正面から見た絵」だけでなく、四方からの見え方で考えておくと安心です。
現場から見た、装飾でつまずきやすいポイント
ブースの制作・施工の現場で、直前に発覚しがちなものを3つ挙げます。
まず、グラフィックの入稿データ。壁面いっぱいに引き伸ばす印刷には、Webサイト用の小さな画像では解像度が足りません。原寸で使える写真やロゴのデータが手元にあるか、デザインを決める前に確認しておいてください。
次が、装飾の「直し」の難しさです。会期が始まってからの貼り替えや作り直しは、時間的にも物理的にもほぼ打つ手がありません。設営日にブースを自分の目で確かめる時間を、スケジュールに入れておきましょう。
そしてもうひとつが、素材の確認漏れ。装飾の企画が盛り上がるほど、前の章で触れた防炎などの素材条件は後回しになりがちです。「何を飾るか」と同時に「何でできているか」まで決めてしまうのが、現場を知る側からのお願いです。

費用はどう考えればいい?
装飾の費用は、「面積 × 仕様」で考えるのが基本です。壁面グラフィックは貼る面積、床は敷く面積、照明は灯数で積み上がります。
同じ面積でも、タペストリー1枚と全面貼り込みでは金額が別物。相場の数字を探すより、小間の図面と「やりたい見せ方」を伝えて見積りを取る方が確実です。予算が限られているなら、その旨を先に伝えてください。効く場所(壁面上部と照明)に絞った組み立て方をご提案できます。
AGSは展示会ブースの設計・施工を装飾まで一括で手がけています。壁面グラフィックやLEDビジョンを組み込んだブースの実例は制作実績でご覧いただけます。見積りは無料です。
よくある質問
Q. 装飾だけをお願いすることはできますか?
ご相談いただけます。ブース本体は主催者のパッケージや他社施工のままで、壁面グラフィックや照明などの装飾だけを依頼したい、という形にも対応しています。
Q. 自社で作った装飾物を持ち込めますか?
多くの場合は持ち込めますが、防炎性能と設置方法の確認が必要です。布・紙・合板類は防炎ラベルの有無を、重量のあるものは固定方法を、事前に共有してください。
Q. 1小間の小さなブースでも、装飾で目立てますか?
工夫の余地は十分にあります。小さい小間ほど、壁面上部のグラフィックと照明に絞った装飾が効きます。全部を飾るより、遠くから見える1点に投資する考え方です。1小間に何をどう置くかというレイアウトそのものは、展示会ブースのデザイン|1小間のレイアウトと造作の選び方で扱っています。
Q. 福岡以外の展示会でも対応できますか?
対応しています。拠点は福岡・博多ですが、現場は全国です。
装飾は、ブースの「見た目」であると同時に、来場者を立ち止まらせる「機能」です。遠くから気づかせ、近くで伝える。この2段構えなら、限られた予算でも効くブースは組めます。まずは小間の図面を手元に、どこへ投資するかから考えてみてください。
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