イベントの司会台本は、式次第の順に「読み上げるセリフ」と「次へ進む合図」を1行ずつ並べて作るのが基本です。セリフは、この記事の場面別の例文を写して、名前と会の名前を入れ替えれば、ひとまず形になります。
書き始める前に1つだけ決めておきたいのが、その会に社外の方がいるかどうかです。
社長のあいさつを紹介する一言でも、社員だけの会と、お取引先やご来賓がいる会では、ふさわしい言い方が変わります。文化審議会の「敬語の指針」でも、まさに忘年会の司会を例にして解説されています。
たとえば社員だけの忘年会なら「社長からごあいさつを頂きます」、ご来賓がいる周年の式典なら「社長からごあいさつを申し上げます」です。ここを最初に決めておくと、台本全体の言い回しがそろいます。
この記事では、台本の形、社外の方がいる会で変わる言い方、開会前から閉会までの例文、時間が押したときや機材の不具合のときのつなぎ方、当日までに確かめること、プロの司会者に頼むかどうかの決め方をまとめました。イベントの企画・施工と、司会を含むスタッフの手配をしている会社の目線で書いています。
司会の台本は、式次第の順に「セリフ」と「合図」を並べて作る
司会の台本は、式次第(その日の進行の順番)の項目ごとに、司会が読み上げるセリフと、次の項目へ進む合図を書いたものです。セリフだけの原稿にせず、合図まで書いておくと、音響・映像の担当や登壇する方と同じ紙で動けます。
形は、次のような表にするのがおすすめです。
| 時刻 | 場面 | 司会のセリフ | 合図・担当への動き |
|---|---|---|---|
| 18:55 | 開会前のアナウンス | まもなく開会いたします。お席にてお待ちください。 | BGMを小さく(音響) |
| 19:00 | 開会のことば | ただいまより、〇〇株式会社 創立〇〇周年記念式典を開会いたします。 | 照明を落とす→ステージに明かり(照明) |
| 19:02 | 社長のあいさつ | 〇〇より、皆さまにごあいさつを申し上げます。 | 社長が演台に着いたら司会は一歩下がる |
「合図」の列には、何をきっかけに誰が何をするかを書きます。司会の「それでは、ご覧ください」の一言で映像を流す、登壇者が演台に着いたらマイクを入れる、といった具合です。
この列が空いていると、本番で音や映像を出す人が、司会の言葉のどこで動けばいいか分からなくなります。司会と操作する人がお互いの様子をうかがうことになり、そのぶん会場に間が空きやすくなります。

セリフは箇条書きではなく、そのまま読める文で書いてください。当日は緊張するので、要点だけのメモから文を組み立てるのは思ったより難しいです。
先に決めること|社外の方がいる会か、社内だけの会か
台本の言い回しは、社外の方がいる会かどうかで変わります。社外の方がいる会では、自分の会社の人を立てない言い方にするのが基本です。
文化審議会の「敬語の指針」(2007年2月の答申)は、社内の忘年会で社長のあいさつを紹介する司会の言い方を取り上げています。社員だけの会なら社長を立てて「社長からごあいさつを頂きます」、社外の人が多くいる会なら、聞く人たちを立てて「社長からごあいさつを申し上げます」が適切だとしています(敬語の指針 44〜45ページ・2026年10月17日確認)。
同じ指針には、取引先の方に自分の会社の部長のことを話すとき、「田中部長」ではなく「田中」や「部長の田中」と呼ぶ解説もあります。司会の台本に当てはめると、次の表のとおりです。
| 場面 | 社員だけの会 | 社外の方がいる会 |
|---|---|---|
| 社長のあいさつの紹介 | 〇〇社長からごあいさつを頂きます | 代表取締役社長の〇〇よりごあいさつを申し上げます |
| 自社の役員の紹介 | 〇〇専務にご登壇いただきます | 専務取締役の〇〇がご説明いたします |
| ご来賓の紹介 | (ご来賓は社外の方なので、右と同じ言い方) | 〇〇株式会社 代表取締役社長 〇〇様よりご祝辞を頂戴いたします |
| 締めのあいさつ | 〇〇部長に中締めをお願いいたします | 営業部長の〇〇より、皆さまに御礼を申し上げます |
社員だけの会で自社の人を「〇〇」と呼び捨てにすると、かえって不自然に聞こえます。社外の方がいるかどうかを台本の1行目に書いておくと、ほかの人が台本を直すときにも迷いません。
ご来賓の会社名・役職・お名前は、案内状の名簿やご本人の名刺で正式な表記を確かめてから書きます。役職が変わったばかりの方もいるので、前の年の台本からそのまま写さないようにしてください。
開会前から乾杯までの例文
会の始まりは、開会前のアナウンス、開会のことば、主催者のあいさつ、ご来賓の祝辞、乾杯の順に進むことが多いです。ここは参加者全員が司会の声に注目する時間なので、例文を写して、ゆっくり読める長さにしておきます。
開会前のアナウンス(5分前と1分前)
開会の5分前と1分前に2回入れると、席に戻る方が増えて、開会のことばが静かな中で始められます。
本日はお忙しいところお越しいただき、ありがとうございます。まもなく開会いたします。お席にてお待ちください。なお、携帯電話はマナーモードへの切り替えをお願いいたします。
お待たせいたしました。1分後に開会いたします。お席にお着きください。
写真撮影や配信をする会は、このアナウンスで「本日は記録のため撮影をしております」と一言添えておくと、後で説明する手間が減ります。
開会のことば
皆さま、こんばんは。ただいまより、〇〇株式会社 創立〇〇周年記念式典を開会いたします。本日の司会は、総務部の〇〇が務めます。どうぞよろしくお願いいたします。
社内の会なら、司会の自己紹介は名前と部署で十分です。開会のことばのあとに、終わりの時刻と休憩の有無を一言添えると、参加者が予定を立てやすくなります。

主催者のあいさつ・ご来賓の祝辞の紹介
それでは、開会にあたりまして、代表取締役社長の〇〇よりごあいさつを申し上げます。
続きまして、ご来賓の皆さまを代表いたしまして、〇〇株式会社 代表取締役社長 〇〇様よりご祝辞を頂戴いたします。〇〇様、よろしくお願い申し上げます。
あいさつが終わったら「〇〇様、ありがとうございました」と名前を添えてお礼を言い、拍手を促すと区切りがはっきりします。祝辞が何本か続くときは、2本目以降の方に「続きまして」と言う前に、次の方が席を立つ時間を少し取ると、間が自然になります。
乾杯の案内
それでは、ここで乾杯に移ります。皆さま、お手元のグラスをお持ちください。乾杯のご発声は、〇〇株式会社 専務取締役 〇〇様にお願いいたします。皆さま、どうぞご起立ください。

グラスに飲み物が行き渡ったかを会場のスタッフに目で確かめてから、乾杯の方を呼びます。乾杯のあとは「ありがとうございました。どうぞお掛けください」と着席を促し、歓談に入る案内へつなぎます。
歓談・表彰・余興の例文
乾杯のあとは、歓談をはさみながら、表彰・映像・余興などの出し物を進めます。この時間の司会は、会場がざわついている中で注目を集め直す役になるので、最初の一言を短くするのがコツです。
歓談に入るとき・歓談中のアナウンス
しばらくの間、ご歓談をお楽しみください。お料理はビュッフェ形式でご用意しております。
ご歓談中のところ失礼いたします。このあと20時から、永年勤続の表彰を行います。お席にお戻りください。
歓談中のアナウンスは、話し声に負けないように、いつもより少しゆっくり読みます。出し物の5分前に一度予告しておくと、始めるときに席へ戻っている方が多くなります。
表彰の進行
表彰は「賞の名前→選んだ理由→受賞する方の名前→登壇→授与→記念撮影」の順に進めると、会場の方にも何を表彰しているのかが伝わります。
それでは、ここで本年度の社長賞の表彰を行います。社長賞は、この1年でお客さまからの評価が特に高かった取り組みに贈られます。
受賞されたのは、営業部の〇〇さんです。〇〇さんは、新しいお取引先への提案を1年で〇件まとめ、〇〇の仕組みを部内に広げてくださいました。〇〇さん、どうぞステージへお進みください。
社長より、表彰状と記念品を贈呈いたします。……おめでとうございます。それでは、記念のお写真を撮影いたします。こちら側をご覧ください。
ご来賓やお取引先が多い式典で社員を表彰するときは、先の対照表と同じ考え方で「受賞したのは、営業部の〇〇です」と、自社の人を立てない言い方にそろえます。
選んだ理由の一文があると、会場の方が拍手をするきっかけになります。理由の原稿は担当の部署から事前にもらい、司会の台本に写しておきます。表彰を会社のメッセージとして伝える組み方は、社員総会の企画の記事に書いています。

受賞する方が何人もいるときは、名前を呼ぶ順番と、ステージに上がる側・降りる側の階段を決めておきます。1人ずつの動きが決まっていないと、受賞する方がステージの上で立ち止まり、写真を撮る時間も延びてしまいます。
余興・ゲーム・映像の紹介
ここからは、お待ちかねのビンゴ大会です。カードをお持ちでない方は、お近くのスタッフにお声がけください。
それでは、この30年の歩みを振り返る映像をご覧いただきます。会場が少し暗くなりますので、足元にお気をつけください。……それでは、ご覧いただきましょう。
映像の前の「それでは、ご覧いただきましょう」は、音響・映像の担当にとっての合図です。台本の合図の列に「この一言で映像を出す」と書いておきます。ビンゴやクイズの進め方は、社内懇親会の企画の記事で、盛り上がる会と間延びする会の違いを紹介しています。
中締め・閉会の例文
会の終わりは、中締め、閉会のことば、お帰りの案内の順にまとめます。ここで司会がもたつくと、帰り支度を始めた方と話を聞いている方に分かれてしまうので、最後の3つのセリフは特に短く書いておきます。
宴もたけなわではございますが、そろそろお開きの時間が近づいてまいりました。ここで、営業部長の〇〇より、皆さまに御礼のごあいさつを申し上げます。
以上をもちまして、〇〇株式会社 創立〇〇周年記念式典を終了いたします。本日は最後までご参加いただき、誠にありがとうございました。
お帰りの際は、お手元の記念品をお忘れなくお持ちください。クロークにお荷物をお預けの方は、出口の右手がお受け取りの場所です。どうぞお気をつけてお帰りください。
社員だけの会なら、中締めは「〇〇部長に中締めをお願いいたします」で大丈夫です。一本締めや三本締めをお願いするときは、締める方に事前に伝えておくと、本番で「どちらでやりましょうか」と相談する間がなくなります。

アンケートを取る会は、閉会のことばの前に案内します。閉会のあとでは、多くの方がもう帰り支度を始めています。
時間が押したとき・機材の不具合のときのつなぎ方
当日は、台本どおりに進まない場面がよくあります。慌てないためには、押したときに縮める項目を先に決めておくことと、困ったときに読むつなぎの一言を台本の最後に書いておくことが効きます。
時間が押したとき・早く進んだとき
押したときに縮める順番は、事前に主催者と決めておきます。祝辞を1本、祝電の披露に切り替える、歓談の時間を短くする、といった判断は、司会が本番中に1人で決めるのは難しいからです。式次第の段階での組み方は、周年記念パーティーのプログラムの記事にまとめています。
本日は多数のご祝電を頂戴しております。時間の都合により、お名前のご紹介をもちまして披露に代えさせていただきます。
予定より少し早く進んでおりますので、ここでしばらくご歓談をお楽しみください。
早く進んだときは、歓談の時間を足すのがいちばん自然です。司会がアドリブで話をつなぐより、参加者どうしが話す時間に回したほうが、会場の満足度も下がりにくいと思います。
マイク・映像・登壇者のトラブル
失礼いたしました。マイクの調子を確認しておりますので、少々お待ちください。
ただいま映像の準備をしております。もうしばらくお待ちください。準備ができるまで、次の〇〇を先に進めさせていただきます。
〇〇様は、まもなくお見えになります。順番を入れ替えまして、先に〇〇を行います。
つなぎの一言は、何が起きているかを短く伝えて、次に何をするかを言うだけで十分です。機材の不具合は、司会が原因を説明しようとすると話が長くなります。音響・映像の担当が直しているあいだは、順番を入れ替えて先に進めると、会場を待たせずに済みます。

入れ替えられる順番は、台本を作る段階で決めておきます。司会と音響・映像の担当が「映像が出ないときは表彰を先にする」と同じ紙で知っていれば、目配せ1つで切り替えられます。当日の持ち場と指示を出す人の決め方は、イベント当日の運営体制のつくり方で詳しく書いています。
台本ができたら、当日までに確かめる3つのこと
台本ができたら、名前と肩書きの読み方、声に出したときの時間、音響・映像の担当との合図の3つを確かめます。どれも台本を書いた本人だけでは気づきにくいところです。
名前と肩書きの読み方を、ふりがなで台本に書く
人の名前と会社名の読み間違いは、本人にとっても会場にとっても気まずいものです。登壇する方・表彰する方・ご来賓の名前には、台本の中で直接ふりがなを振っておきます。
読み方は、社内の方なら本人に、ご来賓なら先方の秘書の方や担当の方に確かめます。「中田」が「なかた」か「なかだ」か、のように読み方が2通り以上ある名前ほど、確かめる価値があります。
声に出して読み、時間を計る
台本は、本番と同じ速さで一度通して読みます。黙読では短く感じても、声に出すと思ったより時間がかかるものです。

キャンプのテントも、家で一度張ってみると当日の設営時間が読めますよね。台本も同じで、読みにくい言葉や息が続かない長い文は、声に出したときに初めて見つかります。
読み上げにかかった時間を時刻の欄に書き込むと、押したときにどこで縮められるかも見えてきます。
音響・映像の担当と、合図だけでも読み合わせる
本番前のリハーサルでは、全部を通せなくても、合図のある場面だけは音響・映像の担当と読み合わせておきます。マイクの受け渡し、映像を出す一言、表彰で流す音楽の出だしと止めどころです。

このとき、司会がマイクを持って会場のいちばん後ろの席まで声が届くかも確かめておくと安心です。会場の広さに対してスピーカーの位置が偏っていると、後ろの席では聞き取りにくいことがあります。
台本の形のまま書き込める紙を用意しました。開会前から閉会までの例文入りの台本と、名前と読み方の一覧、押したときに縮める順番、つなぎの言葉、リハーサルで確かめることを1つにまとめています。
プロの司会者に頼むほうがいい会と、社内で司会を立てられる会
社内の懇親会や、参加者がほぼ社員だけの会なら、台本がしっかりしていれば社内の方の司会で進められることが多いです。一方で、社外のご来賓が多い式典や、映像・表彰などのきっかけが多い会は、プロの司会者に頼むと担当の方の負担が大きく減ります。
判断の目安は、次の表のとおりです。
| こんな会なら | 社内の方の司会で進めやすい | プロの司会者に頼むと安心 |
|---|---|---|
| 参加者の顔ぶれ | 社員と家族が中心 | お取引先・ご来賓が多い、報道の方が来る |
| 進行の中身 | 乾杯・歓談・ゲームが中心 | 表彰が多い、映像や照明のきっかけが多い、配信がある |
| 会場と人数 | 会議室・店の貸切で数十人 | ホテルの宴会場・ホールで数百人 |
| 担当の方の当日の役割 | 司会のほかに持ち場がない | 受付・ご来賓の対応・会計などを兼ねる |
特に気をつけたいのが、表の最後の行です。担当の方が司会を兼ねると、進行しながらご来賓の対応や会場とのやり取りが重なり、どちらも手が回らなくなってしまいます。司会だけは別の方に任せて、担当の方は全体を見る役に回るほうが、会全体が落ち着きます。野球でも先発から抑えまで1人で投げ切る計画は立てないのと同じで、役を分けておいたほうが最後まで持ちます。

プロの司会者に頼むときも、この記事の台本の形で式次第・名前と読み方・合図をまとめておくと、打ち合わせが早く進みます。司会者が台本を書いてくれるかどうか、打ち合わせとリハーサルが何回あるかで料金が変わることがあるので、見積りの段階で確かめておきます。
AGSでは、司会(MC)を含むイベントスタッフの派遣と、ステージ・音響・映像の設営を承っています。まとめてのご依頼でも、司会だけといった部分的なご依頼でも大丈夫です。スタッフの手配の流れと依頼のときに伝える項目は、イベントスタッフ派遣の手配の流れの記事に、派遣会社の比べ方はイベントスタッフ派遣会社の選び方の記事にまとめています。
よくある質問
Q. 司会は1人でやるのと2人でやるのと、どちらがいいですか?
2時間程度の会なら、司会は1人で十分なことが多いです。その代わり、時間を見て押しているかどうかを判断する人を別に1人置いておくと、司会は進行に集中できます。2人で司会をするなら、どちらがどの場面を読むかを台本の中で分けておくと安心です。
Q. 台本は見ながら読んでもいいですか?
見ながら読んで大丈夫です。人の名前、賞の名前、会社名のように間違えられないところは、むしろ台本を見て正確に読んでください。顔を上げるのは、呼びかけや拍手を促すところだけでかまいません。
Q. 社内の会で司会をするとき、服装はどうすればいいですか?
参加者の服装に合わせて、少しだけ改まった服を選ぶと失敗しにくいです。式典ならダークスーツ、懇親会なら参加者と同じくらいの服装で、主役やご来賓より目立たないことを優先します。マイクを持つので、袖口が広すぎない服のほうが動きやすいです。
Q. 例文の「〇〇」には、何を入れればいいですか?
会の名前、人の名前と肩書き、時刻を入れます。肩書きは、社外の方がいる会なら「代表取締役社長の〇〇」、社員だけの会なら「〇〇社長」のように、「先に決めること」の章の表に合わせて入れ替えてください。
Related
関連記事
Contact
まずはお気軽に
ご相談ください
お見積り・ご相談は無料です。「こんなことできる?」からで構いません。