採用ページに載せるオフィスの写真がない。来客をどの部屋に通すか、毎回ちょっと迷う。社員から「うちの事務所、殺風景ですよね」と言われて返す言葉がない——「おしゃれなオフィスにしたい」という相談の入口は、だいたいこのどれかです。
先に結論を。おしゃれなオフィスとは、全部の部屋にお金をかけた部屋ではなく、「見せる場所」を絞って、そこにテイストを揃えて投じた部屋のことです。順番としては、テイストをひとつ決める、見せる場所を決める、残りは色数を絞って整える。この3つで見た目は大きく変わります。
この記事では、テイストの決め方、費用の掛けどころ、お金をかけずに印象を変える方法、そしてデザインと実用がぶつかりやすい注意点までをまとめました。内装の設計・施工をやっている会社の目線で書いています。
おしゃれなオフィスは「テイストをひとつに決める」から始まる
最初に決めるのは、色や素材の個別の話ではなくテイスト、つまり部屋全体の方向性です。方向性がないまま良さそうな素材を足していくと、1点ずつは良いのに全体はちぐはぐ、という部屋になります。
キャンプ道具を全部違うメーカーとカラーで揃えると、サイトは妙にごちゃつきます。色をひとつ決めて買い足すだけで、急にまとまって見える。オフィスの内装も同じ理屈です。
よく使われる方向性を挙げます。
| テイスト | 特徴 | 合いやすい会社 |
|---|---|---|
| ナチュラル | 木目×白×グリーン。柔らかく親しみやすい | 採用を強化したい会社、来客の緊張をほぐしたい業種 |
| ミニマル・モノトーン | 白・グレー・黒で構成。直線的ですっきり | デザイン・IT系、シャープな印象を出したい会社 |
| ホテルライク | 間接照明×濃色×上質な素材感 | 士業・コンサルなど、信頼感と落ち着きを見せたい業種 |
| インダストリアル | コンクリート現し×黒鉄×古材 | クリエイティブ系、既存躯体を活かして費用を抑えたいとき |
| 和モダン | 木格子×土壁調×落ち着いた照明 | 伝統や地域性を打ち出したい会社 |
選ぶ基準は好みではなく、「誰に、どう見られたいか」です。来客が多いのか、採用の見学が多いのか、社員が長く過ごす場所を良くしたいのか。見せたい相手が決まると、テイストは2択くらいまで自然に絞れます。
費用の掛けどころは「人が通る順番」で決める
限られた予算でおしゃれに見せたいなら、掛ける場所の優先順位はほぼ決まっています。エントランス、次に会議室・応接、最後に執務室。人が来た順に目にする場所から整える、という順番です。
エントランスは滞在時間が短いのに、会社の印象のかなりの部分を持っていきます。面積が小さいぶん、壁1面の仕上げ・社名サイン・照明に絞って質を上げても、総額はそこまで膨らみません。
会議室と応接は、来客が一番長く過ごす場所です。テーブルと椅子、壁1面、照明。写真に写る背景がきれいだと、オンライン会議でもそのまま効きます。

執務室は面積が大きく、什器の数も多いので、全面に手を入れると費用が一気に伸びます。床と照明を整えて、色数を絞る。執務室はそれで十分に見違えます。
内装費用の総額がどう決まるかという話は、店舗向けに書いた店舗の内装費用の相場の考え方がオフィスにもほぼそのまま使えます。
お金をかけずに印象を変える4つの手
工事の範囲を広げなくても、印象だけなら動かせる場所があります。実務でよく使う順に4つ挙げます。
壁1面のアクセント。 全面を塗り替えなくても、視線が集まる1面だけ色や木目を変えれば部屋の印象は変わります。塗装・クロス・木目シートのどれでやるかで費用は変わりますが、いずれも面積が小さいぶん手が届きやすい。
照明の色と形。 昼白色の蛍光灯をやめて電球色や温白色に寄せる、会議室だけペンダントライトを吊る。照明は面積あたりの印象の変化がいちばん大きい要素です。
グリーンと家具。 造作工事なしで置くだけ。エントランスの椅子を1脚良いものにする方が、安い椅子を3脚並べるより効きます。
サイン(社名ロゴまわり)。 エントランスの壁にロゴを切り文字で立体的に付けるだけで、「ちゃんとした会社」の顔になります。サインは看板の種類と選び方で書いたとおり、素材と照らし方で表情が大きく変わる部分です。
ここで発想をひとつ変えてほしいのですが、おしゃれは「足す」ものではなく「絞る」ものです。色は3色以内、素材の種類も絞る。足し算で部屋を飾るより、引き算で揃える方が、費用も安く仕上がりもきれいです。
デザインと実用がぶつかる場所に注意
おしゃれ優先で決めて、あとで働きにくくなる——これが、オフィスのデザインでいちばん多い失敗パターンです。ぶつかりやすい場所を先に知っておいてください。
照明を落としすぎる。 ホテルライクな暗めの照明は素敵ですが、執務スペースには明るさの基準があります。事務所衛生基準規則では、一般的な事務作業を行う作業面の照度は300ルクス以上、資料の袋詰めのような付随的な事務作業でも150ルクス以上と定められています(出典:厚生労働省「職場における労働衛生基準が変わりました」・2026年8月29日確認)。
間接照明で雰囲気をつくるのはエントランスや休憩スペースまで。執務室は、手元の明るさを先に確保してください。
掃除とメンテナンスを忘れる。 白い床は素敵ですが汚れは正直に出ます。凹凸の大きい素材はほこりが溜まる。仕上げを選ぶときは「誰が、どの頻度で掃除するか」まで一緒に決めておくと、1年後の見た目が変わります。
音を忘れる。 ガラス張りの会議室やコンクリート現しの天井は、音が響きやすく、話し声も抜けやすい。吸音材や布・カーペットの量とセットで考える必要があります。
賃貸の制約を忘れる。 賃貸オフィスでは、退去時の原状回復と、ビル指定の工事区分によって「そもそも触れない場所」があります。凝った造作を計画する前に、賃貸借契約と工事区分の確認が先です。このあたりの進め方はオフィスの内装工事の進め方に詳しく書きました。

工事に進む前に、写真を3枚集めてください
相談の前に、「こうなりたい」写真を3枚だけ集めてください。SNSでも事例サイトでも構いません。
テイストの話を言葉で伝えるのは、実は難しい。「明るくて、開放的で、木の感じ」と言われて浮かべる部屋は、人によってバラバラだからです。3枚に共通している要素——色なのか、素材なのか、照明なのか——を設計側が読み取れれば、提案の精度は最初から大きく上がります。
逆に、10枚も20枚も集める必要はありません。枚数が増えるほどテイストは混ざり、「全部乗せ」の図面に近づいていきます。
AGSのオフィス内装
AGSは店舗・オフィスの内外装の設計・施工を手がけています。内装仕上工事業の福岡県知事許可を持ち、デザインの提案から造作・サイン工事、施工までを一括で請けられる体制です。
オフィスでは、新オフィスのデザイン・内装・施工を一括で担当した実例があります。制作実績でご覧ください。
イベント制作で培った「見せ場をつくる」造作やサインづくりが得意なので、エントランスまわりの一新のような部分的な工事から相談いただけます。拠点は福岡・博多、現場は全国対応。見積りは無料です。
よくある質問
Q. 執務室だけでも、おしゃれにできますか?
できます。床・照明・色数の3点を整えるのが基本で、壁を触らなくても印象は変わるはずです。デスクやチェアなど什器の色を揃えるだけでも効果があるので、工事と什器入れ替えを分けて段階的に進める方法もあります。
Q. 働きながらの改装はできますか?
区画を分けて順番に施工する方法が一般的です。音や粉じんの出る工事を休日や夜間に寄せる調整も含めて、工程の組み方次第で対応できます。詳しくはオフィスの内装工事の進め方をご覧ください。
Q. 費用はどのくらい見ておけばいいですか?
工事の範囲と仕上げの等級で大きく変わるため、一概には言えません。ただ「見せる場所を絞る」方針なら、エントランスと会議室だけの部分改装で始める選択肢があります。条件を伺えば概算をお出しできるので、見積り(無料)でご相談ください。
Q. デザインだけ、または工事だけの依頼もできますか?
どちらも相談可能です。デザイン案を他社の図面から引き継いで施工することも、逆に弊社でデザインした内容を提案書の形でお渡しすることもあります。現状の図面か、部屋の写真があると話が速く進みます。
おしゃれなオフィスづくりで最後にものを言うのは、センスではなく「絞る勇気」です。
テイストをひとつ、見せる場所をひとつ。まずこの2つを決めてから、事例の写真を3枚選んでみてください。それだけで、相談はもう半分終わっています。
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