展示会ブースの装飾は、「遠くから気づかせる」と「近くで伝える」の2段構えで組むのが基本です。
遠くに効くのは壁面上部のグラフィックと照明と映像。近くに効くのは展示台まわりの作り込みと床の切り替え。そして、どの装飾にも共通する前提が「防炎など会場のルールに合った素材を使うこと」です。
この記事では、装飾のアイデアを場所別に整理し、おしゃれに見せるコツと見落としやすいルールまで、ブースの制作・施工を手がける立場からまとめます。出展準備全体の流れとレイアウトの考え方は展示会ブースの作り方で解説しているので、あわせてどうぞ。
展示会ブースの装飾は何のためにする?
飾るためではありません。立ち寄ってもらうためです。
会場を回る来場者がひとつのブースに目を留める時間は、ほんの一瞬しかありません。その一瞬で「自分に関係がありそうだ」と気づかせ、入りやすい空気をつくる。これが装飾の仕事です。この仕事をしていない装飾は、どれだけ手が込んでいても飾りにとどまります。
だから装飾を考える順番は、色や素材からではありません。まず「遠くの来場者に何を気づかせるか」、次に「立ち止まった人に何を見せるか」。この2つが決まってから、場所別の手段を選びます。
場所別・展示会ブースの装飾アイデア
装飾の主な舞台は、壁面・照明・床・展示台・映像の5つです。全部をやる必要はなく、ブースの目的と予算に合わせて効く場所から選びます。
| 場所 | 主な手段 | 効く距離 |
|---|---|---|
| 壁面 | 壁面グラフィック・タペストリー | 遠距離(通路の先から) |
| 照明 | スポットライト・面で照らすライト | 遠〜中距離 |
| 床 | パンチカーペット・フロアシート | 近距離(ブース前) |
| 展示台・カウンター | 展示台の高さ・色、カウンター正面のロゴ | 近距離 |
| 映像 | モニター・LEDビジョン | 遠距離 |
壁面 — グラフィックとタペストリー
もっとも面積が大きく、遠くまで届く装飾が壁面です。
定番は、壁一面に印刷シートを貼り込む壁面グラフィック。写真やキービジュアルを大きく使えるため、ブースの世界観を一気につくれます。コストを抑えるなら、既存の壁パネルに大判のタペストリー(布製の垂れ幕)を掛ける方法もあります。
どちらの場合も、上部3分の1は「遠くから読む場所」。キャッチコピーと社名以外を詰め込まないのがセオリーです。
照明 — 明るさは、それだけで人を寄せる
会場の基本照明だけのブースと、スポットライトを足したブースが並ぶと、明るい方に人は流れます。
展示物にはスポットライトを、壁面グラフィックには面で照らすライトを。電球色か白色かで印象も変わります。照明は装飾のなかでも費用対効果が高い一方、電気は会場への申請と工事が必要な設備です。数と位置は図面の段階で決めておきましょう。
床 — 1面変えるだけで「区画」が「お店」になる
床は忘れられがちですが、通路と同じ床のままだとブースの領域が曖昧に見えます。
パンチカーペット(展示会でよく使われる薄手のカーペット)の色を通路と変える。たったそれだけでも空間にまとまりが出るのだから、床は費用のわりに働き者です。木目調のフロアシートやタイルカーペットまで上げれば、質感はもう一段変わるでしょう。
展示台・カウンター — 製品の「見え方」をつくる
展示台は、置く高さと背景で製品の見え方が決まります。目玉の製品は胸の高さ、手に取ってほしいものはやや低め。台の色は製品より目立たない無彩色が基本です。
カウンターは受付と立ち話の拠点になるので、正面にロゴやグラフィックを入れておくと、写真に撮られたときにも社名が残ります。当日の受付や配布を外部スタッフに任せる場合の頼み方は、イベントスタッフ派遣の記事にまとめています。
映像 — 動きで目を引く
人の目は、動くものに引かれます。装飾のなかで唯一「動き」を出せるのが映像です。
モニター1台の設置から壁面いっぱいのLEDビジョンまで、規模はさまざま(レンタル料金の目安はLEDビジョンの価格の記事にまとめています)。どの場合も、映像は「音がなくても伝わる内容」にしておくのがポイントです。会場は騒がしく、音声はほぼ届きません。

おしゃれなブースに共通する3つのコツ
装飾は、足すより引く。洗練されて見えるブースには、共通点があります。
1つ目は、色数を絞ることです。 ベースの色+コーポレートカラー+強調色の3色程度に抑えると、まとまりが生まれます。伝えたいことが多いブースほど色が増えがちですが、色が増えるほど、どれも目立たなくなる。悩んだら減らす方向が安全です。
2つ目は、余白を残すことです。 壁面を文字と写真で埋め尽くすと、遠目には「ごちゃごちゃした壁」にしか見えません。
キャンプ場で写真映えするのは、道具を全部並べたサイトではなく、焚き火台ひとつを主役にしたサイトです。壁面の情報は遠距離用のキャッチコピーに絞り、詳しい説明は手元の配布物や商談席に持たせる。役割分担ができているブースは、それだけで上品に見えます。
3つ目は、素材感を揃えることです。 木目調でまとめる、白とアルミでまとめる、布で柔らかくまとめる。素材のトーンが揃っていると、同じ予算でも仕上がりの印象は大きく変わります。既製の什器を使う場合も、色と素材を装飾に合わせて選ぶと「借り物感」が薄れます。
装飾の前に確認したい会場のルール
展示会の装飾には、会場と主催者のルールがあります。デザインが決まってから引っかかると手戻りが大きいので、先に押さえておきましょう。
まず防炎です。 装飾に使いたい素材が布・紙・木のときは、「防炎ラベル付きか」を選定の条件に加えてください。
展示会場は消防法の規制対象になっており、幕・カーペット・展示用合板といった装飾素材には防炎性能が求められます(制度の詳細は公益財団法人日本防炎協会の解説・2026年8月21日確認)。
装飾のデザインがどれだけ良くても、素材がルールに合わなければ会場に掲げられません。申請まわりも含めた出展準備全体の注意点は、展示会ブースの作り方で解説しています。
次に高さ制限とはみ出しです。 装飾の高さの上限や、小間の境界からはみ出してよい範囲は、展示会ごとに出展規程で決められています。上に伸ばす装飾や吊り看板を考えているなら、規程の確認が先です。
最後に、隣と裏への配慮です。 隣接する小間との境界壁は、自分のブース側だけでなく相手側からも見えます。
多くの展示会で、境界壁の裏面(隣ブース側)の処理や、一定の高さを超える壁面の背面化粧が求められます。装飾のデザインは「自分の正面から見た絵」だけでなく、四方からの見え方で考えておくと安心です。
現場から見た、装飾でつまずきやすいポイント
ブースの制作・施工の現場で、直前に発覚しがちなものを挙げます。
まず、グラフィックの入稿データです。壁面いっぱいに引き伸ばす印刷には、Webサイト用の小さな画像では解像度が足りません。原寸で使える写真やロゴのデータが手元にあるか、デザインを決める前に確認しておきたいところです。
次が、装飾の「直し」の難しさ。会期が始まってからの貼り替えや作り直しは、時間的にも物理的にもほぼ打つ手がありません。設営日にブースを自分の目で確かめる時間を、スケジュールに入れておいてください。
そしてもうひとつが、素材の確認漏れです。装飾の企画が盛り上がるほど、前の章で触れた防炎などの素材条件は後回しになりがち。「何を飾るか」と同時に「何でできているか」まで決めてしまうのが、現場を知る側からのお願いです。

費用はどう考えればいい?
装飾の費用は、「面積 × 仕様」で考えるのが基本です。壁面グラフィックは貼る面積、床は敷く面積、照明は灯数で積み上がります。
同じ面積でも、タペストリー1枚と全面貼り込みでは金額が変わるため、相場の数字を探すより、小間の図面と「やりたい見せ方」を伝えて見積りを取る方が確実でしょう。予算が限られている場合は、その旨を先に伝えるのがおすすめです。効く場所(壁面上部と照明)に絞った組み立て方をご提案できるからです。
AGSは展示会ブースの設計・施工を装飾まで一括で手がけています。壁面グラフィックやLEDビジョンを組み込んだブースの実例は制作実績でご覧いただけます。見積りは無料です。
よくある質問
Q. 装飾だけをお願いすることはできますか?
ご相談いただけます。ブース本体は主催者のパッケージや他社施工のままで、壁面グラフィックや照明などの装飾だけを依頼したい、という形にも対応しています。
Q. 自社で作った装飾物を持ち込めますか?
多くの場合は持ち込めますが、防炎性能と設置方法の確認が必要です。布・紙・合板類は防炎ラベルの有無を、重量のあるものは固定方法を、事前に共有してください。
Q. 1小間の小さなブースでも、装飾で目立てますか?
工夫の余地は十分にあります。小さい小間ほど、壁面上部のグラフィックと照明に絞った装飾が効きます。全部を飾るより、遠くから見える1点に投資する考え方です。
Q. 福岡以外の展示会でも対応できますか?
対応しています。拠点は福岡・博多ですが、現場は全国です。
装飾は、ブースの「見た目」であると同時に、来場者を立ち止まらせる「機能」でもあります。遠くから気づかせ、近くで伝える。この2段構えで場所ごとの手段を選べば、限られた予算でも効くブースは組めます。まずは小間の図面を手元に、どこに投資するかから考えてみてください。
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