催事やポップアップストアの売場に置く什器をオーダーで作るなら、頼む前に次の5つを決めておくと話が早く進みます。
- 作るか、既製品やレンタルで済ませるか
- 寸法と、載せる物、売場での使い方
- 売場まで運び込めるか(搬入の経路と作業できる時間)
- 施設の決まりと防炎
- 会期のあとに使い回すか、処分するか
この5つが決まると、頼む会社の種類も、見積りの金額もかなり絞れます。
期間限定の売場の什器は、店に置きっぱなしにする什器とは事情が違います。閉店後の短い時間に運び込んで組み立て、会期が終われば外して持ち帰ります。なので、どんな形にするかより先に、施設の決まりが作り方を左右する場面が多いんです。
たとえば東京駅前のKITTEのイベントスペースでは、搬入と設営ができるのは0:30〜6:00に限られ、持ち込む什器や備品を事前に預かることもできません。地下のエレベーターに収まらない長い物を地上から入れるときは、利用日の2.5か月前までに申し出る決まりです。大きな一枚物の陳列台を作るなら、運び込みの段取りから考え直すことになります。
この記事では、5つの決め方と、什器製作を頼める会社の種類、金額が動くところ、会期から逆算した日程をまとめました。催事場の造作やポップアップストアの設営をしている会社の目線で書いています。
作るか、既製品やレンタルで済ませるかを最初に決める
最初に決めたいのは、そもそも作る必要があるかどうかです。既製品やレンタルの什器で売場の寸法と商品に合うなら、作るより費用も日数も抑えやすくなります。

作る側に倒れやすいのは、次のような場面です。
| 作ったほうがよい場面 | 理由 |
|---|---|
| 商品の大きさや形に、既製の棚や台の寸法が合わない | 段の高さや奥行が合わないと、商品がはみ出したり、奥まで見えなかったりする |
| 区画の寸法がいびつで、既製品を並べると隙間や通れない所ができる | 柱や壁の出っ張りに合わせた寸法で作ると、区画を無駄なく使える |
| ブランドの色や素材で、売場全体をそろえたい | 既製品は色や素材の選択肢が限られる |
| 試食や実演、レジのように、売場で作業をする台が要る | 作業する人の高さや、道具を置く場所まで合わせられる |
| 同じ什器を、会期の違う出店に何度か持ち込む | 運びやすさと丈夫さを最初から作りに入れられる |
逆に、会期が数日で、商品も一般的な大きさなら、施設が貸してくれる什器やレンタルの什器に、ロゴや色を足すだけで十分なこともあります。施設の什器を使う場合、借りる場合、作る場合の費用の違いは、ポップアップストアの費用の記事で、場所代と並べて整理しています。
迷ったときは、全部を作るか全部を借りるかの二択にしなくても大丈夫です。お客さまの目に一番入る正面の陳列台だけを作り、壁の棚やストックの台は既製品にする、という組み合わせ方もできます。
寸法と載せる物、売場での使い方を書き出す
作ると決めたら、什器ごとに寸法と載せる物、売場での使い方を書き出します。これが図面の元になるので、ここが曖昧だと、見積りの金額も図面もなかなか固まりません。

書き出しておきたいのは、次の項目です。
| 書き出すこと | 中身の例 | 書いておくと |
|---|---|---|
| 置く場所 | 区画の図面に、什器ごとの位置を書き込む。柱・壁・通路も | 区画に収まるか、通路の幅が残るかを作る側が確かめられる |
| 外の寸法 | 幅・奥行・高さの上限 | 施設の高さの決まりや、隣の区画との境に合わせて作れる |
| 載せる物 | 商品の大きさ・重さ・1段に並べたい数 | 段の高さ、天板の厚み、脚の強さが決まる |
| 使う人の動き | 売る側が立つのか座るのか、レジ・試食・包装の作業があるか | 作業する面の高さと、道具やストックの置き場が決まる |
| お客さまの動き | どちらから近づき、どこで手に取るか | 正面の向きと、手が届く高さが決まる |
| 電気 | 棚の照明・レジ・試食の機器を使うか | 配線の通し方と、コンセントの位置が決まる |
| 見た目 | ブランドの色・素材の見本、ロゴを入れる場所 | 仕上げの方法が決まり、金額の見当が付く |
中でも抜けやすいのが「使う人の動き」です。レジや試食の台は、天板の高さと、手元に道具を置く場所が合わないと、会期中ずっと作業がしにくくなります。百貨店の催事で試食や実演をするときの売場の決まりは、催事の集客方法の記事に書いています。
商品の写真と寸法、区画の図面がそろっていれば、手描きのラフでも十分に伝わります。
売場まで運び込めるかを、搬入の経路と作業時間から確かめる
什器は、作れても売場まで運び込めなければ使えません。施設の搬入口から売場までの経路と、作業できる時間を先に確かめ、その中で運べる大きさに作ります。

見ておきたいのは、搬入口の扉、搬入に使うエレベーターの扉と中の大きさ、売場までの通路の幅と曲がり角です。いちばん狭い所を通れる大きさが、運べる部材の上限になります。
KITTEのイベントスペースの利用規約では、地下のエレベーターの規格に収まらない長い物があるときに限って地上から搬入でき、その場合は利用日の2.5か月前までの申し出、2か月前までに扉を開ける作業をする指定業者との直接契約、臨時警備の手配が要るとされています(出典:KITTEイベントスペース運営事務局「KITTEイベントスペース 利用規約」2024年11月(PDF)・2026年10月18日確認)。
ショッピングセンターの催事スペースでも、同じような決まりがあります。イオン上越ショッピングセンターの案内では、搬出入は原則として閉店後1時間と7時から開店前まで、搬入口以外から大きな物を運び込むときは時間に関係なく立哨警備(入口などに立って見張る警備員)が要るとされています(出典:イオン上越ショッピングセンター「催事スペースのご利用について」2021年10月4日(PDF)・2026年10月18日確認)。
大きな什器は、工場で部材に分けて作り、売場で組み立てる作りにすることが多いです。分けて作れば、エレベーターに載り、1人か2人で運べる大きさに収めやすくなります。そのかわり、組み立ての時間が要るので、作業できる時間の中で組み上がるかを作る側と一緒に確かめておいてください。
同じKITTEの規約には、持ち込む什器や備品を事前に預かることはできず、宅配便の代理受け取りもしないとも書かれています(前掲・KITTE利用規約)。什器は搬入の時間に合わせて運ぶことになるので、運送の手配も見積りの範囲に入っているかを聞いておくと安心です。
施設の決まりと防炎を、図面を描く前に確かめる
図面を描く前に、施設の利用規約や出店の手引きで、什器にかかわる決まりを読んでおきます。中でも床、防火設備、防炎の3つは、作り方に直接響くところです。
床は、傷を付けない作りと運び方が求められます。イオン上越ショッピングセンターの案内では、床を傷めるおそれがあるときは搬出入を含めて床を養生(傷が付かないように覆うこと)し、傷を付けた場合は修繕の費用を負担すると書かれています(前掲・イオン上越ショッピングセンターの案内)。重い什器の脚の当たりや、キャスターの材質は、図面の段階で決めておきたいところです。
防火設備のまわりには、物を置けません。同じ案内には、防火シャッターの下の白線の上や、防火扉の開け閉めと通行の妨げになる場所に物を置かないよう書かれています(前掲)。区画の中にシャッターの線が通っているときは、その線をまたがない配置と寸法にします。

防炎は、合板を使う什器では特に確かめておきたい点です。消防法施行令第4条の3は、百貨店や物品販売の店舗、展示場などで使う物品のうち、防炎の性能が求められる物品として、カーテンやじゅうたんと並んで「展示用の合板」を挙げています(出典:e-Gov法令検索「消防法施行令」第4条の3・別表第一・2026年10月18日確認)。
どこまでが「展示用の合板」にあたるかは、消防の審査基準で示されています。たとえば札幌市消防局の基準では、展示用の台のパネル、掲示板、バックボード、仕切り用のパネルなどが挙がっていて、合板には表面のラベルに加えて裏面にも表示を付けることとされています(出典:札幌市消防局「第9 防炎防火対象物の取扱い」(PDF)・2026年10月18日確認)。
陳列台や壁面の棚に合板を使うなら、防炎の合板を使うか、施設とその地域の消防の考え方を先に確かめておくと、搬入の当日に慌てずに済みます。消防庁も、百貨店や地下街のような不特定多数の人が出入りする施設では、防炎物品の使用が義務づけられていると案内しています(出典:総務省消防庁「防炎品」・2026年10月18日確認)。
施設によっては、図面と配線図を出して承認を受けてからでないと設営できない決まりもあります。施設に出す書類の流れは、イベント装飾はどこに頼むかの記事にまとめています。
会期のあとに使い回すか、処分するかを決めておく
最後に、会期が終わった什器をどうするかを決めます。使い回すか、1回で処分するかで、作り方も金額も変わるからです。

使い回すなら、何度ばらして組み立てても傷みにくい作り、運ぶときの傷を防ぐ梱包、会期の合間の保管場所までを最初に決めておきます。ロゴや季節の柄のように替わる部分は、貼り替えられるパネルにしておくと、次の出店でも本体をそのまま使えます。
1回で終わるなら、作り込みを抑えて、撤去と処分の費用まで見積りに入れてもらいます。会期の最終日に撤去して、そのまま持ち帰って処分してもらえるかは、会社によって違うので確かめておいてください。
ここまでの5つを、什器ごとに1枚で書き出せるシートを用意しました。作る会社に渡せば、見積りと図面の話がそろった条件から始められます。
什器製作を頼める会社は、得意な素材と、売場での設置まで受け持つかで分かれる
什器製作を頼める会社は、得意な素材と、売場での設置や撤去まで受け持つかどうかで分かれます。期間限定の売場では、作るだけでなく、夜間の搬入と設置、撤去まで誰がやるかが大事になります。

| 会社の種類 | 得意なこと | 向く場面 | 頼むときに確かめたいこと |
|---|---|---|---|
| 木工所・家具を作る会社 | 合板や木材の陳列台、棚、カウンター | 木の質感を出したい、形が複雑 | 売場への運び込みと設置まで受けるか |
| 金属を加工する会社 | スチールやステンレスの棚、フレーム、ハンガー什器 | 細く丈夫な形、重い物を載せる | 塗装の色、運ぶときの重さ |
| アクリルや樹脂を加工する会社 | アクリルの台、ケース、仕切り | 商品を透けて見せたい、小物の陳列 | 傷の付きやすさと運ぶときの梱包 |
| 紙の什器・販促用の什器の会社 | 段ボールなどの紙の陳列台、売場のPOP | 店頭に数多く置く、軽く運びたい | 防炎が要る場所か、重さに耐えるか |
| 装飾・ディスプレイの会社、イベントの施工会社 | 売場全体のデザインと什器の製作、夜間の設置と撤去 | 壁面や照明、看板と什器を一緒にそろえたい | 自社で作る部分と、協力会社に頼む部分 |
| 什器のレンタル会社 | 棚や台、ショーケースの貸し出し | 短い会期、一般的な大きさの商品 | 設置と撤去を誰がやるか |
什器だけを作るなら、素材が得意な会社に図面を渡して作ってもらう方法があります。その場合、施設とのやりとりや、夜間の運び込みと設置は、頼む側か別の会社の受け持ちです。
売場の壁面や照明、看板と什器を一緒に作るなら、売場全体を受け持つ装飾の会社や施工会社にまとめると、色や寸法がそろいやすくなります。施設の書類や当日の作業の順番も1つの会社が組んでくれるので、担当の方の手間は減らせるでしょう。
展示会のブースで使う展示台やカウンターも、考え方は変わりません。展示会では、ブースの壁を組み立て式のパネルにするか木工で作るかで、什器との組み合わせ方が変わります。その違いはシステムパネルのブースの記事に書いています。
金額が動くところと、会期から逆算した日程
什器製作の金額は、形と大きさだけでは決まりません。期間限定の売場では、作り方の選択と、運び込みや設置の条件で大きく動きます。

金額を動かしやすいのは、次のような点です。
| 金額が動くところ | 動く理由 |
|---|---|
| 表面の仕上げ | 塗装、シート貼り、本物の木の薄板(突板)などで、材料と手間が変わる |
| 分けて運べる作り | 部材に分けて組み立てる作りは、継ぎ目の金物や加工の手間が増える |
| 台数 | 図面や試作の手間は台数に関係なくかかるので、1台だけだと1台あたりは割高になりやすい |
| 照明や電気 | 棚の照明や配線を組み込むと、部材と作業が増える |
| 運搬と設置の時間帯 | 閉店後や早朝の作業、警備の手配、作業する人数で変わる |
| 会期の合間の保管 | 使い回すなら、保管の場所と期間の費用がかかる |
| 撤去と処分 | 1回で終えるなら、撤去と処分の費用が最後にかかる |
予算が合わないときは、全部を少しずつ削るより、お客さまの目に一番入る正面の什器に仕上げのお金を残し、裏方の台やストックの棚を既製品に替えるほうが、売場の印象は落ちにくいと思います。見えないところより、見えるところにお金をかけるという考え方です。
日程は、会期の初日から逆算して決めます。
| さかのぼる順 | やること |
|---|---|
| 会期の初日 | 開店 |
| その前 | 搬入・設置(施設の作業できる時間の中で) |
| その前 | 納品・仮組み(工場で一度組んで、寸法と仕上がりを確かめる) |
| その前 | 製作 |
| その前 | 図面の確定と、施設への書類の提出・承認 |
| その前 | 見積り・打ち合わせ(5つを伝える) |
各工程にかかる日数は、什器の数と素材、会社の込み具合で変わるので、見積りのときに作る会社に聞いてください。施設の締切があるときは、そこが一番固い日付になります。KITTEのイベントスペースでは、利用日の31日前までの事前打ち合わせで施工プランなどの資料を出す流れで、長い物を地上から入れる場合は2.5か月前までの申し出が要ります(前掲・KITTE利用規約)。
ポップアップストアの出店そのものの流れは、ポップアップストアとは何かの記事に、目的決めから振り返りまでの順番でまとめています。
AGSに什器製作を頼む場合
AGSは、イベント装飾・店舗装飾の一つとして、催事場の造作と什器を承っています。陳列台やひな壇、壁面の棚やハンガー什器、レジカウンター、試食や実演のカウンター、棚の照明を、売場の寸法と商品に合わせて作り、設置します。

既製の什器では寸法や見せ方が合わないときや、ブランドの色で売場をそろえたいときは、ご相談ください。ポップアップストアの設営では、壁面やロゴの看板、陳列什器、照明、床のシートまでをまとめて組み上げ、会期のあとの撤去まで同じチームで対応します。展示会ブースの展示台やカウンターも、展示会ブースのページのとおり、用途に合わせてご用意しています。
催事場や展示会の施工では、これまでに博多阪急のバレンタイン催事会場や全国有名駅弁とうまいもん大会のイベント会場の施工、ものづくりワールド九州の展示ブースの設計・施工などを手がけてきました。商業施設の閉店後や夜間の設営も承ります。
拠点は福岡・博多で、現場は全国に伺っています。区画の図面と商品の写真がまだそろっていない段階でも大丈夫です。お見積りは無料でお出しします。
よくある質問
Q. 什器は1台だけでも作ってもらえますか?
1台から受けている会社もあります。ただ、図面を描く手間や試作の手間は台数に関係なくかかるので、1台だけだと1台あたりの金額は高くなりがちです。正面の1台だけを作り、ほかは既製品やレンタルと組み合わせると、費用を抑えながら売場の見せ方をそろえられます。
Q. 什器のデザインからお願いできますか?
装飾の会社や施工の会社は、売場全体のデザインから受けることが多いです。木工所や金属の加工会社のように、図面を渡して作ってもらう形が中心の会社もあります。デザインから頼みたいときは、問い合わせの時点で「形はまだ決まっていない」と伝えておくと、話が早いでしょう。
Q. どのくらい前に頼めばいいですか?
施設に出す書類の締切から逆算します。KITTEのイベントスペースでは、利用日の31日前までの事前打ち合わせで施工プランなどを出す流れなので、図面と見積りはその前に固めておく必要があります。製作にかかる日数は什器の数と素材で変わるので、会期が決まった段階で一度相談しておくと安心です。
Q. アクリルの什器も一緒に頼めますか?
アクリルの台やケースは、アクリルを加工する会社が得意とする分野です。売場全体を受け持つ装飾の会社が、アクリルの部分を専門の会社に頼んで、木工の什器と一緒に納めることもあります。まとめて頼みたいときは、自社で作る部分と協力会社に頼む部分を、見積りの段階で聞いておいてください。
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