イベント施工とは、展示会のブースや催事の装飾、式典のステージといった「イベントで使うもの」を、会場で実際に形にする仕事の総称です。木工の造作から装飾の仕上げ、電気・照明、会期前の設営、終了後の撤去・原状回復まで、施工会社にまとめて頼めます。
イベントの現場は、決められた搬入時間の中で組み上げて、終わったらすぐ会場を元に戻すのが前提です。普段の建築工事とは段取りがだいぶ違うので、ここを専門にする施工会社がいるんですね。
たとえば展示会だと、設営は会期前日の数時間、撤去は最終日の閉場後その日のうち、というスケジュールが一般的です。
この記事では、施工会社に頼める仕事の中身、会社によって頼める範囲がどう違うか、依頼から撤去までの流れ、費用が動く条件をまとめました。イベントの企画・制作・施工をしている会社の目線で書いています。
イベント施工とはどんな仕事か
イベント施工は、企画やデザインで決めた内容を、会場で実物にする工程です。イベントづくりの流れを大きく分けると「企画(何をやるか)→デザイン(どう見せるか)→施工(実際につくる)」で、その最後の工程を受け持ちます。
図面をもとに工場で部材をつくり、会場へ運んで組み立て、会期が終わったら撤去して会場を借りる前の状態に戻すまでが一続きの仕事です。「つくって終わり」ではなく「戻すまで」が入っているのが、お店や家の工事との大きな違いですね。
呼び方はいろいろあります。展示会の文脈では「展示会施工」「ブース施工」、催事や式典では「会場設営」と呼ばれることが多いですが、中身はおおむね同じ仕事だと考えて大丈夫です。祭りや商業施設の特設会場に出すブースの作り方はイベントブースのデザインに、館の側でイベントを企画するときの決めごとは商業施設のイベント企画に分けて書いています。
施工会社に頼める仕事の範囲
会場でモノに関わる仕事は、一通り頼めます。具体的には、木工造作、システムパネル、装飾の仕上げ、電気・照明、サイン・グラフィック、設営・撤去、原状回復までが範囲です。
ひとつずつ見ていきます。
木工造作
壁や受付カウンター、商品を置く台などを、木材で一からつくる仕事です。図面に合わせて工場で部材を製作し、会場で組み立てて、塗装やシート貼りで仕上げます。
形も色も自由が利くので、ブースの世界観をつくり込みたいときの主役になります。そのぶん製作の手間がかかるので、費用と工期は次に紹介するシステムパネルより大きくなりやすいです。
システムパネル
規格化された柱とパネルを組み合わせて、壁や小間を建てる方式です。部材をレンタルして組むので、木工より費用を抑えやすく、撤去後のごみもほとんど出ません。
木工との使い分けや向き不向きはシステムパネルのブースで詳しく書いています。
装飾の仕上げ
造作した壁を塗装やクロス、カッティングシートで仕上げたり、布や造花、バルーンで会場を飾り付けたりする仕事です。季節の催事やセレモニーの飾り付けもここに入ります。
展示会での飾り付けの考え方は展示会ブースの装飾に、催事・施設の装飾は会場装飾のサービスページにまとめています。
電気・照明
コンセントの増設、スポットライトやLED照明の取り付け、配線の処理までを担当します。会場の幹線から小間まで電気を引き込む工事は、会場指定の電気業者と分担する形が多いです。
照明が入ると、同じ造作でも見え方が大きく変わります。ここはお金をかける価値を感じやすいところです。

サイン・グラフィック
社名サインや看板、壁一面のグラフィックシート、吊り下げバナーなどの製作と取り付けです。データの入稿から出力、現場での貼り込みまで頼めます。
設営・撤去
工場でつくった部材を会場に運び込み、決められた時間内に組み上げるのが設営です。撤去はその逆で、閉場後に解体して搬出し、床の養生まで剥がして引き渡します。
撤去は全出展社が一斉に始めるので、時間との勝負になりやすいんです。ここの段取りの良さは、施工会社の腕が出るところだと思います。
原状回復
借りた会場を、借りる前の状態に戻す仕事です。床のテープ跡の除去、壁の補修、ごみの処分までが含まれます。
会場ごとに原状回復の条件が決められているので、それを満たして引き渡すところまでが施工の締めくくりになります。
展示会以外の現場でも中身は同じ
ここまで展示会を例にしましたが、商業施設の催事、周年式典、発表会のステージ回りも、頼める仕事の中身はほぼ共通です。ステージ回りの組み方はステージ設営の流れで別に書いています。
どこまで頼めるかは会社によって違う
施工会社には、施工だけを専門にする会社と、企画やデザインから一括で受ける会社があります。「どこからどこまでお願いできるか」は、最初の問い合わせで確認しておくのが確実です。広告代理店・企画会社まで含めた頼み先ごとの違いはイベント会社の種類の記事にまとめました。
施工専業の会社は、デザイン会社や広告代理店がつくった図面を形にするのが主な仕事です。図面が手元にあるなら、この形でまったく問題ありません。
一方で「何をつくるか」がまだ固まっていない段階なら、企画から一括の会社に相談するほうが話が早いです。目的と予算を伝えれば、プランと図面づくりから一緒に進められます。
私たちAGSは後者のタイプで、イベントの企画からブースの製作・施工、当日の運営まで一括でお受けしています。グループにWebやグラフィックを担当するアディザイン、LEDビジョンを扱うアディザネージがいるので、映像演出や告知物まで窓口を1つにまとめられます。拠点は福岡・博多ですが、現場は全国です。
依頼の流れ|相談から撤去まで
流れは「相談→現地・図面の確認→見積り→製作→搬入・設営→会期→撤去」の順です。展示会なら、会期の2〜3か月前に相談が始まっていると、選択肢を狭めずに進めやすいです。
各段階の中身と、つまずきやすいポイントを添えます。
- 相談: イベント名・会期・会場・予算の目安を伝えます。決まっていない項目があっても大丈夫で、開催日と会場さえあれば話は始められます
- 現地・図面の確認: 会場の規程(高さ制限・防炎・電気容量)と搬入経路を確認します。会場ごとにルールが違うので、ここを飛ばすと後の手戻りが大きくなりやすいです
- 見積り: 図面と仕様をもとに金額が出ます。複数社を比べるなら、含まれる範囲(電気・撤去・原状回復)を揃えて見てください
- 製作: 工場で造作物やグラフィックをつくる期間です。ロゴデータや原稿の入稿が遅れると、ここが丸ごと後ろにずれます
- 搬入・設営: 決められた搬入時間に合わせて運び込み、組み上げます。搬入口やエレベーターの寸法は、製作の前に確認しておくのが安全です
- 会期中: 不具合が出たときの補修や、展示替えの対応をします
- 撤去: 閉場後に解体・搬出し、原状回復して引き渡します

全体の時間割は、撤去の締切から逆算して組まれます。キャンプの撤収を「暗くなる前に終わらせる」と決めて夕飯の時間を逆算するのと同じで、出口の時刻が最初に固定されるんですね。
出展準備の全体像は展示会ブースの作り方にまとめているので、初めての出展ならあわせて読んでみてください。
見積り依頼のときに伝える項目(会期・会場・小間数・つくりたいもの・電気・搬入条件)を書き込める記入式シートを用意しました。印刷して、問い合わせの前に埋めてみてください。
施工の費用は何で動くか
具体的な金額は条件の組み合わせで大きく変わるため、ここでは「何が金額を動かすか」の構造を押さえておきます。大きく効くのは、つくる量と現場の条件の2つです。
- 造作の量: 木工造作が多いほど、製作費と組み立ての人件費が増えます。システムパネルやレンタル什器を組み合わせると抑えやすいです
- 電気・照明: 使う電気の容量と照明の数で変わります。映像機器が多い展示は容量も増えやすいです
- 搬入の条件: 搬入口が遠い、エレベーターしか使えない、車両の待機場所がないといった条件は、作業時間と人手に直結します
- 作業の時間帯: 設営・撤去が深夜や早朝に指定されている会場では、その分の割増がかかります
- 会場までの距離: 遠方の現場では、運搬費や宿泊費が加わります
ラーメンの値段が見えないスープで決まるのと似ていて、金額を動かすのは図面に描かれない条件のほうだったりします。見積りの前に搬入条件と電気の使い方を伝えておくと、後から金額が動く場面を減らせます。
安くする相談をするときは、削る順番が大事です。目立たせたい主役の造作を削ると、出展の目的である集客に効かなくなるので、まず搬入や仕様の見直しで調整できないかを聞いてみてください。
ブース全体の費用感は展示会ブースの費用に、小さい小間でどこにお金を使うかは1小間ブースのデザインに書いています。
よくある質問
Q. デザインや図面がなくても頼めますか?
企画から一括で受けている会社なら頼めます。参考にしたいイメージ写真や、置きたい物のリストがあれば、そこからプランと図面を起こせます。施工専業の会社に頼む場合は、先にデザイン会社で図面をつくる段取りになります。
Q. 設営・撤去だけをお願いすることはできますか?
対応している会社が多いです。造作物を自社で持っている場合や、毎回同じブースを建てる場合に、設営・撤去の作業だけを頼む形ですね。他社がつくった造作物は図面や部材の情報が要るので、事前に共有してください。
Q. 当日の運営スタッフもまとめて頼めますか?
会社によります。私たちのように人材サービスを持つ会社なら、施工とあわせて受付や呼び込みのスタッフも手配できます。展示会での頼み方は展示会のスタッフ派遣にまとめました。
Q. どのくらい前に相談すればいいですか?
展示会なら会期の2〜3か月前が目安です。凝った造作をするならもっと早いほうが安心ですし、直前でも内容によっては対応できることがあるので、まずは日程を伝えて相談してみてください。
施工は、イベント準備の中でも「プロに任せる範囲」がはっきりしている工程です。何をつくりたいかを伝えれば、会場のルールの確認から撤去まで、施工会社の側で段取りを組めます。
まずは会期と会場を手元に置いて、つくりたいものを箇条書きにするところから始めてみてください。相談の一歩目は、それで十分です!
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