不動産屋で「ここはスケルトンです」と言われて、内見に行ったらコンクリートむき出しの空間だった。天井には配管が走り、床はただのコンクリート。「ここが本当に店になるのか」と、その場で固まった方もいるのではないでしょうか。
スケルトン物件とは、内装・設備がない骨組みの状態の物件のことです。内装工事の坪単価は30万〜80万円が目安で、前の店の内装が残る居抜き物件(坪15万〜50万円)より高くなりますが、そのぶんレイアウトも設備もゼロから自由に設計できます(坪単価の出典と確認日は費用相場の記事に記載)。
この記事では、スケルトンで必要になる工事の中身、居抜きとの損得の考え方、内見で確認したい設備、退去時のスケルトン戻しまでをまとめました。店舗の内装制作・施工をしている会社の目線で書いています。
スケルトン物件とは?内装のない「骨組みだけ」の状態
スケルトン物件は、建物の構造体(骨組み)だけの状態で貸し出される物件です。壁・天井・床の仕上げがなく、厨房やトイレなどの設備もない。文字どおり英語の「骨格」です。
キャンプで言えば、区画だけのフリーサイトです。何もないから、テントの向きも配置も自分で決められる。一方の居抜きは、テントも机も設営済みのサイトを引き継ぐ形で、すぐ使えるかわりに配置は前の人の思想のままです。
どちらが良い悪いではなく、性格の違いです。こだわりの空間を一からつくるならスケルトン、初期費用と開業までの時間を優先するなら居抜き。この軸で考えると選びやすくなります。
スケルトン工事で必要になる工事の中身
スケルトンの内装工事は「箱をつくる工事」と「命を通す工事」の2階建てで考えると全体像がつかめます。金額が大きく動くのは、目に見えない後者の方です。
| 分類 | 工事 | 内容 |
|---|---|---|
| 箱をつくる | 間仕切り・壁 | 軽鉄下地とボードで部屋を区切る |
| 箱をつくる | 床・天井 | 下地から仕上げまで。天井を張らない「現し」も選択肢 |
| 箱をつくる | 建具・造作 | ドア、カウンター、棚などの造り付け |
| 命を通す | 電気 | 幹線の引き込み、分電盤、照明・コンセント配線 |
| 命を通す | 給排水 | 給水・排水管の敷設。厨房・トイレの位置で経路が決まる |
| 命を通す | ガス・厨房 | ガス管の敷設と厨房機器の設置 |
| 命を通す | 空調・換気・排気 | エアコン、換気扇、ダクト。飲食店は排気経路が要 |
「命を通す」側の設備工事は、物件の元々のインフラ条件に金額が左右されます。電気の容量が足りなければ引き込みから、排気の経路が取れなければダクトを長く引き回すことに。同じ広さ・同じデザインでも見積りが変わるのはこのためです。
業種ごとに重い設備は違います。飲食店なら厨房と排気、美容室なら給湯とシャンプー台の給排水。業種別に何が効くかは業種別の店舗内装のポイントにまとめています。
居抜きとの違い|費用・工期・自由度
坪単価の目安は、スケルトンが30万〜80万円、居抜きが15万〜50万円です。20坪ならスケルトンで600万〜1,600万円、居抜きで300万〜1,000万円という幅。金額の内訳・出典データ・安く抑えるコツは店舗の内装費用の相場で詳しく書いたので(数字は同記事と同じ目安です)、ここでは損得の考え方に絞ります。
居抜きの安さは、「前の店との近さ」で決まります。前が同業態で、厨房も客席の配置もほぼそのまま使えるなら、居抜きの安さは本物です。逆に業態が遠いと、既存内装の解体と撤去から始まることになり、スケルトンより高くつくことすらあります。
| スケルトン | 居抜き | |
|---|---|---|
| 初期費用 | 高い(坪30万〜80万円) | 抑えやすい(坪15万〜50万円) |
| 工期 | 長い(設計から数か月単位) | 短くできる(設備流用の範囲による) |
| レイアウトの自由度 | 完全に自由 | 前の店の配置に縛られる |
| 設備の状態 | すべて新品 | 中古。故障リスクと残り寿命を引き継ぐ |
| 向くケース | こだわりの業態・長期の営業計画 | 前の店と近い業態・早く開けたい |
居抜きの設備は「動くかどうか」だけでなく「あと何年もつか」で見る必要があります。開業半年で厨房機器が壊れると、営業しながらの入れ替えになり、閉めて工事するより痛い。契約前に設備の状態確認まで済ませる段取りは店舗の内装工事の流れで解説しています。

内見で確認したい設備・インフラ|契約前がすべて
スケルトン物件の内見で見るべきは、広さや雰囲気より先にインフラです。電気・ガス・水・空気の4つの通り道が、その物件でできる商売の上限を決めます。
内装のデザインは、あとからいくらでも変えられます。でも建物に引き込まれている電気の容量と、排気を外に出せる経路は、テナントの一存では変えられないことが多い。だから確認の優先順位は「変えられないものから」です。
- 電気: 引き込み容量は何アンペアか。増設は可能か
- ガス: ガス管は来ているか。口径は業務用の厨房に足りるか
- 給排水: 給水・排水の立ち上がり位置はどこか。勾配は取れるか
- 排気: ダクトを通せる経路はあるか。排気の出口はどこに向くか
- 空調: 室外機の置き場はあるか
- 構造: 天井の高さ(梁下の実寸)。床の段差
- 搬入: 厨房機器や什器が通る経路と開口の寸法
内見でここまで見るのは大変に思えますよね。上の項目を書き込み欄つきでA4にまとめた確認シートを用意したので、印刷して持って行ってください。確認漏れがなくなるうえ、その記録がそのまま施工会社への見積り依頼の資料になります。
内見の段階で施工会社に同行を頼むのも、遠回りに見えて近道です。契約前に「この物件でやりたい業態が成立するか」のプロの目が入ると、契約後の想定外をかなり減らせます。
スケルトン戻しと契約条件|借りる前に「返し方」を決める
スケルトン物件の契約で見落とされがちなのが、退去時の「スケルトン戻し」です。借りたときと同じ骨組みの状態に戻して返す条件で、この解体費用は退去時にまとまって発生します。
住宅の賃貸には国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」がありますが、これは民間の居住用賃貸を対象にしたもので、店舗などの事業用賃貸は基本的にこの枠の外です(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について・2026年8月31日確認)。守ってくれる標準ルールが薄いぶん、契約書の原状回復条項がほぼすべてになります。
だから、借りる前に確認しておきたいのは次の3つです。どこまで戻すのか(完全なスケルトンか、現状か)。造作譲渡は可能か(次の借主に内装を売って退去できるか)。工事区分はどうなっているか(どこまでが貸主の工事で、どこからが借主か)。
出口の条件を決めずに入ると、退去のときにまとまった解体費用で慌てることになります。入口の交渉で、出口まで決めておく。地味ですが、数年後の自分を守る確認です。
開業資金のなかでのスケルトン工事
内装工事費は、開業資金のなかで最大級の割合を占めやすい費目です。だからこそ、物件選びの段階から「物件取得費+内装費」の合計で比べることをおすすめします。
家賃が安いスケルトン物件と、家賃が高い居抜き物件。月々の家賃だけ比べると前者が魅力的に見えますが、内装費と開業までの空家賃(工事期間中も家賃は発生します)まで足すと、逆転することがよくあります。合計額での比較が、開業資金の計画を守ります。
工事そのものの進み方と期間の目安は店舗の内装工事の流れ、外装・ファサードの考え方は店舗外装のデザインをどうぞ。

AGSの店舗内装
AGSは店舗・オフィスの内外装として、店舗の内装デザインから施工までを手がけています。スケルトンからの新装も、居抜きの改装も、物件の内見段階からの相談が可能です。
「この物件、うちの業態でいけるでしょうか」という段階で構いません。図面か内見時の写真があれば、話はそこから始められます。拠点は福岡・博多、現場は全国。見積りは無料です。
よくある質問
Q. スケルトン物件の内装工事はどのくらいの期間がかかりますか?
工事だけで2週間〜1か月半程度、設計・見積りを含めると数か月単位で見ておくと安全です。設備工事の量と建物側の工事ルール(夜間のみ・休館日のみ等)で変わります。工程の全体像は内装工事の流れの記事にまとめています。
Q. 「半スケルトン」とは何ですか?
床・壁・天井の一部や空調などが残された、スケルトンと居抜きの中間の状態を指す通称です。定義が曖昧な言葉なので、名前で判断せず「何が残っていて、何が使えるのか」を一覧でもらって確認するのが確実です。
Q. スケルトンと居抜き、結局どちらが得ですか?
やりたい業態が前の店と近いなら居抜き、遠いならスケルトンが有利になりやすいです。ただし居抜きは設備の状態次第で逆転するため、「物件取得費+内装費+設備の入れ替え費」の合計で比べてください。個別の条件での具体的な比較は、図面があれば見積りでお答えできます。
Q. 内見に施工会社が同行してもらえますか?
対応している会社が多く、AGSでも内見段階からのご相談をお受けしています。契約前に設備・インフラの成立性を確認できるので、とくに飲食店など設備の重い業態では同行をおすすめします。
スケルトン物件は、何もないから不安に見えて、何もないから自由です。その自由を活かせるかどうかは、契約前にインフラと出口条件をどれだけ確認できたかで決まります。内見の予定が入ったら、まず確認シートの印刷から始めてください。
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