主催者が用意する舞台照明プランは、照明を変える場面を「何をきっかけに、どこを、どんな明るさと色にするか」の順に並べた表(キューシート)と、出演者の立ち位置の図の2つが中心です。器具をどこに吊って何番の回路につなぐかを描く「仕込み図」は、照明の担当者が作ります。
照明の担当者は、変わり目の合図と照らす場所が分かれば、使う器具や明るさを自分で決められます。一方で、作品のどこで何を見せたいかは、振り付けや進行を決めた主催者にしか分かりません。
ホールの側も、主催者に求めているのは場面ごとの指示のほうです。札幌市教育文化会館の利用の手引きでは、照明プランとして、舞台の進行に沿って客席と舞台の暗転・明転、スポット、色付けなどの指示を舞台進行表に書き込むよう案内しています。
なので、主催者は器具の名前や図面の描き方を覚えるより、「場面の区切り」と「きっかけ」を書き出すことに時間を使うのがおすすめです。
この記事では、主催者が書くものと照明の担当者が作るものの分け方、ダンス・演奏会・式典での場面の分け方、キューシートの書き方、照明の担当者に渡すものと期限、リハーサルでの確かめ方をまとめました。ダンスや音楽の教室の発表会、学校や地域の舞台、企業の式典で、ホールの照明係や照明の会社に希望を伝える方に向けて、イベントの企画・制作・施工をしている会社の目線で書いています。
舞台照明プランは、主催者が書くキューシートと、照明の担当者が作る仕込み図に分かれる
舞台照明プランという言葉は、場面ごとの照明の希望を書いた表と、器具の配置を描いた図面の両方を指して使われます。主催者が受け持つのは前者で、後者は照明の担当者の仕事です。

| 書くもの | 誰が作るか | 中身 | 主催者がすること |
|---|---|---|---|
| キューシート(場面ときっかけの表) | 主催者が下書きし、照明の担当者が手直しする | 照明が変わる順番、きっかけ、照らす場所、明るさと色、変わる速さ | 演目ごとに書いて渡す |
| 立ち位置の図 | 主催者 | 出演者が立つ場所、ピアノや演台などの位置、暗い中で動く道 | キューシートに添えて渡す |
| 舞台進行表 | 主催者 | 会の始まりから終わりまでの順番と時刻、転換、休憩 | 照明の指示を書き込み、決められた部数を持っていく |
| 仕込み図 | 照明の担当者 | どの器具をどこに吊り、どの回路につなぎ、何色を入れるか | 誰が用意するかを、ホールか照明の手配先に確かめる |
| 操作卓のデータ | 照明の担当者 | 場面ごとの明るさを記憶させたもの | リハーサルで見て、直したいところを伝える |
舞台照明は、原則として1台の操作卓から全部の照明に指示を出し、場面ごとの明るさを記憶させて再現する仕組みです。全国公立文化施設協会の研修の講義録では、プロの舞台照明の会社では照明をデザインする人(プランナー)と操作する人の仕事がはっきり分かれていて、公演によってはプランナーは来館せず、操作する人だけが来ることもある、と紹介されています(出典:全国公立文化施設協会「人材養成基礎講座 講座5 舞台設備」(2019年2月7日の講義録)・2026年11月8日確認)。
発表会や式典でも、打ち合わせに出た人と、本番で操作卓の前に座る人が違うことがあります。口頭で伝えた希望は途中で抜けやすいので、紙に書いて、その紙が本番で操作する人の手元まで届く形にしておくと安心です。
仕込み図は、器具の位置と回路を描いた照明の担当者の図面
仕込み図は、ステージの上のどの棒(バトン)や客席のどの位置に、どの照明器具を何台付け、それぞれどの回路につないで何色を入れるかを描いた図面です。ホールによっては、よく使う器具をあらかじめ吊った「基本仕込み」の図を用意していて、照明の担当者はそこに器具を足したり向きを変えたりして本番の照明を組みます。
打ち合わせに持っていく資料に、仕込み図が入っているホールもあります。札幌市教育文化会館の手引きでは、打ち合わせの資料として、舞台進行表とプログラム(またはチラシ)を各4部、舞台・音響・照明の図面(仕込み図)、持ち込む物と機材の一覧を挙げています(出典:札幌市教育文化会館「舞台ご利用の手引き」・2026年11月8日確認)。
主催者が自分で仕込み図を描くことは、あまりありません。照明の会社に頼む会なら会社が、ホールの照明だけで行う会ならホールの担当の方が用意することが多いので、「仕込み図はどなたが用意しますか」と最初の連絡で聞いておくと、資料をそろえる段取りが立てやすくなります。主催者からは、仕込み図のもとになる立ち位置の図とキューシートを渡します。
器具の名前と役目は舞台照明の種類と名前の記事にまとめているので、仕込み図や打ち合わせで知らない名前が出てきたときに見てみてください。
照明を変える場面は、ダンス・演奏会・式典でそれぞれ区切り方が違う
キューシートを書く前に、どこで照明を変えるかの区切りを決めます。区切り方は会の種類で変わり、ダンスは曲の展開と人の動き、演奏会は曲と曲の間、式典は進行表の項目で区切るのが基本です。
照明を変える回数を増やすほど、照明を組む時間とリハーサルで合わせる時間が延びます。札幌市教育文化会館の手引きでも、色を使った照明やマイクの本数が多い演出では、設営の目安の時間よりさらに仕込みの時間がかかると書かれています。見せたい場面を先に決めて、そこに変わり目を集めるのがおすすめです。
ダンス・バレエの発表会は、曲の展開と人数の入れ替わりで区切る
ダンスやバレエでは、1曲の中で照明を何度か変えることがよくあります。区切りの候補は、曲の始まり、曲調が変わるところ(サビやテンポの変わり目)、ソロや少人数になる場面、人数が増えて全員がそろう場面、最後のポーズの5つです。

区切りの数は、作品で一番見せたい場面から逆に決めると絞りやすいです。たとえば、ソロの場面を際立たせたいなら、ソロの直前に周りを暗くして1人だけ照らし、全員がそろったところで全体を明るく戻す、という2つの変わり目が軸になります。
出演者の衣装の色も一緒に考えておきます。背景の色と衣装の色が近いと、照明を変えたときに衣装が背景に溶けて見えにくくなることがあるからです。色の伝え方は舞台照明の種類と名前の記事の色の章で例を挙げています。
ピアノ・合唱・吹奏楽の演奏会は、曲の間と出演者の入れ替えで区切る
演奏会では、演奏中は照明を大きく変えず、出演者の入退場と曲の前後で変える組み方が多いです。演奏する人は楽譜や指揮者を見ながら演奏するので、曲の途中で手元が暗くなると演奏しにくくなります。
ピアノの発表会なら、出演者が入れ替わる間を明るいままにする(明転)か、暗くする(暗転)かを最初に決めておけば、キューシートの大半は書けます。暗転にする場合は、次の出演者がピアノの椅子まで暗い中を歩くことになるので、足元の目印の位置も一緒に決めておきます。

式典・表彰式は、進行表の項目ごとに区切る
式典では、進行表の項目がそのまま照明の区切りになります。開会前、開会、主催者のあいさつ、表彰、映像を流す時間、閉会、退場のように並べ、項目ごとに「照らす場所」を決めます。
式典で照明を変えるのは、主に演台と表彰の立ち位置を照らすときと、スクリーンやLEDビジョンに映像を流すときです。映像の間はステージを暗めにして画面を見やすくし、終わったら演台を照らし直す、という変わり目が入ります。映像を背にした登壇者の照らし方はイベントの照明の記事で説明しています。
きっかけは、司会の言葉や登壇者の動きで決めることが多いです。司会の台本ができていれば、台本のどの言葉で照明を変えるかを書き込むと、照明の担当者が本番で合わせやすくなります。司会の台本の作り方はイベント司会進行の例文と台本の記事、表彰の立ち位置と順番は社内表彰式の記事にまとめています。

劇や朗読がある学校・地域の舞台は、台本の場面転換で区切る
劇や朗読がある舞台では、台本の場面が変わるところと、時間や場所が変わるところ(朝から夜へ、屋外から室内へ)が区切りです。台本のその行に照明の番号を書き込んでおくと、キューシートと台本を照らし合わせやすくなります。
キューシートには、きっかけ・照らす場所・明るさと色・変わる速さを1行ずつ書く
キューシートは、照明の変わり目(キュー)を上から順に1行ずつ書く表です。1行に書くのは、番号、きっかけ、照らす場所、明るさと色、変わる速さの5つで、ここまで書いてあれば、照明の担当者は照明を組み始められます。
札幌市教育文化会館の手引きの用語集では、きっかけ(キュー)を「行動を起す機会及びそれを知らせる合図」と説明しています。照明の担当者は、本番でこの合図を聞いたり見たりして操作卓を動かすので、きっかけは本番で聞こえるもの・見えるもので書くのがポイントです。演奏する人にとっての楽譜と同じで、照明の担当者は本番中、この表を手元に置いて操作します。
| 番号 | きっかけ | 照らす場所 | 明るさ・色 | 変わる速さ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 音が鳴る前(板付き) | 中央の3人だけ | 上から白。背景は暗いまま | 3秒で明るく |
| 2 | 0分32秒(曲調が変わる) | ステージ全体 | 全体を明るく。背景を淡い水色 | 2秒 |
| 3 | 1分48秒(ソロの始まり) | 下手の前の1人 | 1人だけ白。周りは暗く | すぐ |
| 4 | ソロの最後のポーズ | ステージ全体 | 全体を明るく戻す。背景は濃い青 | 1秒 |
| 5 | 3分20秒(最後の音) | ステージ全体 | 真っ暗にする(カットアウト) | すぐ |
(上の表は、3分30秒のダンスの1曲を例にした書き方の見本です。「板付き」は、幕が開く前や暗いうちに出演者が立ち位置に立っておき、そこから始めることです)
きっかけは、音源の時間・音・動き・言葉のどれかで書く
きっかけの書き方は、主に次の4つです。同じ1曲の中で混ぜて使って構いません。
- 音源の時間: 「1分48秒」のように、曲の頭からの時間で書きます。照明の担当者が時計や再生機器の表示で合わせられるので、ずれにくい書き方です
- 音: 「サビの頭」「ドラムが止まったところ」のように、曲の中の音で書きます。音楽を聞きながら合わせる担当者には伝わりやすい一方、同じ音が何度も出てくる曲では、何回目かまで書きます
- 動き: 「全員が中央でポーズ」「ソロの人が下手に移動し終わったら」のように、出演者の動きで書きます。音楽に合わせきれない動きの場面や、無音の場面で使います
- 言葉: 「司会の『どうぞ』」「表彰状を読み終えたところ」のように、話す言葉で書きます。式典や劇で使います
音源の時間で書くなら、本番で流す音源と同じものを使って測ります。編集し直した音源や別の録音だと、数秒ずれることがあるからです。札幌市教育文化会館の手引きの音響の欄でも、再生したいものの時間を把握して、再生のタイミングを正確に決めるよう書かれています。

明るさと色は場面の言葉で、変わる速さは秒数で書く
明るさと色は、「全体を明るく」「中央の1人だけ白」「背景を濃い青」のように、どこをどうしたいかを言葉で書けば十分です。照明の色の番号や器具の名前を書く必要はありません。
変わる速さは、「すぐ」「3秒」のように秒数で書くと、照明の担当者がそのまま操作卓に入れられます。ゆっくり暗くしたい場面は「5秒で暗く」、曲の最後の音と同時に消したい場面は「すぐ(カットアウト)」のように書きます。暗転・カットアウト・フェードなどの言葉の意味は、舞台照明の種類と名前の記事の言葉の章にまとめています。
立ち位置の図を、キューシートと一緒に渡す
照明は人が立つ場所に向けて当てるので、キューシートだけでは「照らす場所」がどこなのかが伝わりきりません。ステージを上から見た図に、出演者の立ち位置とキューの番号、ピアノや演台、大道具の位置を書き込んで添えます。
図は、客席から見て右が上手(かみて)、左が下手(しもて)です。ステージの床には、立ち位置の目印としてテープを貼ることが多く、これを「バミリ」と呼びます。図の立ち位置とバミリの位置をそろえておくと、照明の担当者はその位置を狙って照明を合わせられます。
キューシートと立ち位置の図を1つにまとめた記入用のシートを用意しました。1つの演目につき1部ずつ書いて、照明の担当者に渡せます。演目が多い会は、先に舞台照明 演目ごとの希望シートで会全体の希望を一覧にしてから、変わり目の多い演目だけこのシートで細かく書くと進めやすいです。
照明の担当者には、キューシートと進行表・音源・立ち位置の図を期限までに渡す
照明の担当者に渡すのは、キューシート、立ち位置の図、舞台進行表、本番で流す音源と曲の長さ、衣装の色と参考の写真や動画です。渡す時期は、ホールの打ち合わせの期限から逆算します。

- キューシート: 演目ごとに1部。照明を変えない演目も「全体を明るく、変化なし」と1行書いておくと、抜けと区別できます
- 立ち位置の図: キューシートに添えます。暗い中で動く道と、出入りする袖(上手か下手か)も書きます
- 舞台進行表: 会の始まりから終わりまでの順番と時刻、休憩、転換の時間。照明の指示を書き込んだものを、ホールが決めた部数だけ用意します
- 音源と曲の長さ: 本番で流す音源と、1曲ごとの長さ。音響の担当の方にも同じものを渡します
- 衣装の色と参考の写真・動画: 見せたい雰囲気が分かるもの。言葉だけより早く伝わります
打ち合わせの期限は、ホールによってかなり違います。札幌市教育文化会館の場合、舞台・音響・照明を含めた全体の打ち合わせは予約制で、遅くとも2週間から10日前が目安です。あきた芸術劇場ミルハスでは、大ホールと中ホールの打ち合わせを、使う日の2か月前から1か月前までの間に行う決まりです(出典:あきた芸術劇場ミルハス「ご利用案内」2025年4月1日版・2026年11月8日確認)。
ホールの打ち合わせより前に、照明の会社と相談する場合は、さらに早めに渡すことになります。ホールを借りたら、まず利用案内で打ち合わせの期限と持っていく資料を確かめ、そこから1〜2週間前をキューシートを書き終える目安にしておくと、直す時間も取れます。
音響のきっかけも同じ進行表で決まるので、照明と音響の担当者に同じ進行表を渡すと、本番で食い違いにくくなります。マイクやスピーカーの決め方はイベントの音響の記事で紹介しています。
リハーサルでは、きっかけ・顔の明るさ・暗い中の動きを、客席から確かめる
リハーサルで確かめるのは、きっかけが合うか、立ち位置で顔が暗くならないか、暗い中で安全に動けるかの3つです。照明は客席から見たときの見え方が大事なので、客席の真ん中あたりから見る人を1人決めておきます。

照明を本番の状態にして、出演者が立ち位置ときっかけを1つずつ確かめる稽古を「場当たり」と呼びます。本番と同じ音源を使い、キューの番号の順に曲を頭出ししながら進めると、短い時間でも変わり目を一通り確かめられます。
リハーサルの時間は限られていることが多いので、変わり目が多い演目、暗転を挟む演目、ピンスポットで人を追う演目のように、本番で食い違ったときに目立ちやすい場面から先に合わせておくと安心です。照明を変えない演目なら、明るさを一度見ておく程度で済む場面が多いと思います。
暗転の中を移動する場面は、実際に照明を落として歩いてみるのが確実です。足元の目印に、暗い中で光るテープ(蓄光テープ)を貼っておくと、出演者が自分の位置を見つけやすくなります。
リハーサルで直したことは、その場でキューシートに書き込みます。札幌市教育文化会館の手引きでは、本番当日も、仕込みが終わったあとに舞台進行表をもとにホールの舞台担当者と打ち合わせるよう案内しています。直したあとの紙を、本番で操作する人と同じものにそろえておくのがポイントです。
発表会・式典の照明を、ステージや音響とまとめて相談したいとき
ホールの照明だけでは足りない演出をしたい会や、ホールではない会場にステージを組む会では、照明の機材と操作する人を、ステージの設営や音響と一緒に頼むと、打ち合わせの窓口を1つにまとめられます。
AGSでは、ステージ設営・レンタルの中で、演台や登壇者を照らすスポットライト、動きのある光で演出するムービングライト、色を変えられるLEDパーライトと、進行に合わせて照明を操作するオペレーターを手配しています。ステージの組み方と費用の考え方はステージ設営の記事、照明がどこまで要るかと電源の数え方はイベントの照明の記事にまとめました。これまでに施工したステージの実例は制作実績でご覧いただけます。
発表会のステージやロビーの飾り方とホールの決まりは発表会の装飾の記事で紹介しています。お見積りは無料で、拠点は福岡・博多、現場は全国にお伺いします。演目の一覧と書きかけのキューシートがあれば、相談の段階でも具体的なお話ができます。
よくある質問
Q. 照明プランは、主催者が全部書かないといけませんか?
主催者が書くのは、場面ごとのきっかけと照らしたい場所、明るさと色の希望までで十分です。器具の選び方や配置(仕込み図)、操作卓への記憶は照明の担当者が受け持ちます。分からない欄は空けたまま渡し、打ち合わせで照明の担当者と一緒に埋めていく形でも問題ありません。
Q. キューシートと舞台進行表は、どちらか1つでいいですか?
式典のように照明の変わり目が少ない会なら、舞台進行表に照明の指示を書き込むだけで足りることも多いです。ダンスや劇のように1つの演目の中で何度も照明を変える会は、進行表とは別に、演目ごとのキューシートを付けると伝わりやすくなります。
Q. 1曲の中で照明は何回くらい変えるものですか?
決まった回数はなく、作品と会の時間によります。変える回数が増えるほど、照明を組む時間とリハーサルで合わせる時間が延びるので、作品で一番見せたい場面から変わり目を決め、合わせる時間に収まる数に絞るのがおすすめです。
Q. 照明の担当者との打ち合わせは、いつまでにすればいいですか?
ホールの利用案内で決められていることが多く、札幌市教育文化会館のように2週間から10日前を目安にするホールもあれば、あきた芸術劇場ミルハスの大ホールのように2か月前から1か月前までに行うホールもあります。ホールを借りたら、最初に打ち合わせの期限と持っていく資料を確かめてください。
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