展示会の集客は、経験上、会期前の準備で大きく差がつきます。当日の呼び込みだけで挽回するのは、なかなか難しいものです。
来場者の多くは、事前に出展社を調べて回る先の目星を付けてから会場に来ます。主催者が連れてきてくれるのは会場の入口まで。そこから先、自社ブースの前で足を止めてもらう働きかけは、出展者の仕事です。
ブースをつくる仕事で多くの出展社を見てきて、集客のうまい会社には共通点があります。自社の見どころを分析し、紹介ページを1枚用意して、SNS広告で来てほしい相手に事前に届けている。会期が始まる前に、「来てくれる人」を作り終えているんです。
この記事では、展示会の集客を会期前・会期中・会期後の3段階に分けて、事前案内とSNS告知のやり方、当日の声かけ、集めた名刺のフォローまでまとめました。展示会ブースの設計・施工をしている会社の目線で書いています。
なお、主催者として自分のイベントに来場者を集める話はイベントの集客方法で書きました。この記事は、出展者が自社ブースに人を集める話です。
展示会の集客は、会期前に大半が決まる
展示会の集客は、会場では始められません。始まっているのは、案内を送り出す会期3〜4週間前からです。
前提として押さえておきたい役割分担があります。ジェトロが見本市の出展者向けにまとめた資料では、主催者が誘致してくれるのは「会場まで」で、会場に来た来場者を自社ブースへ誘致するのは出展者自身、広報・来場者誘致は主催者と出展者の共同作業だと整理されています(出典:ジェトロ「初めての海外見本市のために〜出展のポイント〜」2023年12月・2026年8月30日確認)。
海外見本市向けの資料ですが、この構図は国内の展示会でも同じです。会場の来場者数がどれだけ多くても、自社ブースの前を素通りされたら、出展の成果はゼロのまま。ブースの手前までは主催者が連れてきてくれる、そこから先は自分たち、と考えてください。
やることを3段階で並べると、こうなります。
| 段階 | やること | 成果の測り方 |
|---|---|---|
| 会期前 | 既存のお客さま・見込みのお客さまへの案内、営業の個別アポ、出展告知 | 事前アポの件数、「行きます」の返事の数 |
| 会期中 | 声かけ、配布物、デモ、持ち場の運用 | 名刺・商談の件数 |
| 会期後 | 名刺の仕分けと連絡 | 商談化・受注 |
野球観戦と似ています。PayPayドームに行く日を、先発予告が出てから決める人は多い。展示会の来場者も、事前に出展社の一覧を眺めて、回る先の目星を付けてから会場に来る人が少なくありません。
その「目星」に自社を入れてもらう働きかけが、事前集客です。ここを飛ばして当日の呼び込みだけで勝負すると、通路を歩く方の偶然に頼ることになります。
私も若い頃、初日の朝にカタログをきれいに並べて満足していました。午後になっても人が来ない時間の長さは、並べたカタログの数では埋まりません。
事前集客のやり方 — 「来てくれる人」を先に作る
事前集客の柱は5つあります。お客さまへの案内、営業の個別アポ、自社媒体での告知、SNS広告つきの紹介ページ、主催者の仕組みの活用です。

① 案内状・メールを送る。 既存のお客さまと、名刺交換だけで止まっている見込みのお客さまに、出展の案内を送ります。書くのは展示会名・会期・会場に加えて、ホール番号とブース番号、当日の担当者名、そして「行くと何が見られるか」です。
前掲のジェトロ資料でも、案内状・招待状は開催の約14日前に発送し、ブース番号から担当者名までを記載するとされています。主催者から出展者に招待券が配られる展示会なら、案内に同封すると相手の入場の手間も減らせます。
② 営業からの個別アポ。 有望な相手には、一斉メールとは別に担当営業から個別に連絡して、「◯日の14時にブースで」まで決めてしまいます。展示会は、普段アポの取りにくい相手にも「近くまで来るので」と声をかけやすい機会です。事前アポが3件あるだけで、当日の空気はまるで変わります。
③ 自社媒体での出展告知。 自社サイトのお知らせ、SNS、メールの署名欄。お金のかからない告知先は意外と多いものです。「出展します」だけで終わらせず、新製品のデモが見られる、実機に触れる、といった来る理由まで書いてください。
④ 紹介ページを1枚作り、SNS広告で届ける。 集客のうまい出展社に共通しているのが、これです。自社の見どころを分析して1枚の紹介ページ(LP)にまとめ、SNS広告で事前に告知する。ビジネス向けの展示会なら、会場周辺のエリアや年齢層、経営者といった属性まで配信先を絞れるFacebook広告がよく使われています。
紹介ページには、担当スタッフの紹介も載せてください。担当と専門分野、そして「この展示は私に聞いてください」の一言。実際に、スタッフ紹介を載せたページを見た来場者が、会場で「あの人だ」と担当者に声をかけてくれた例があります。出身地や出身校を添えておくと、それが会話のきっかけになることもあります。
⑤ 主催者の仕組みを使う。 多くの展示会には、公式サイトの出展社ページがあります。来場者は会期前にここを検索するので、製品情報や画像の登録枠は締切までに埋めておく。主催者のメールマガジンや広告枠など、有料の露出メニューが用意されている場合もあります。
5つとも、締切は開催日からの逆算で決まります。案内状は2〜3週間前に届くように、アポ取りはその前の1か月前から、出展社ページは主催者の登録締切までに。紹介ページとSNS広告は、作る時間と配信する期間の両方が要るので、いちばん早く動き始めてください。
当日、ブースに人を集める動き
当日にできるのは、通りかかった方の足を止めて、立ち寄りやすい状態を保つことです。柱はキャッチコピー・声かけ・配布物・デモ・持ち場の5つ。
キャッチコピーは、1つに絞って大きく。 遠目から「何のブースか」が3秒で伝わることが、すべての前提です。伝えたいことが複数あっても、壁面に並べるほど、どれも読まれなくなります。
どの訴求が刺さるか決めきれないときは、LEDサイネージで複数のキャッチコピーを切り替えて、反応を見る方法があります。私たちが自社で出展したときは、この方法で訴求ごとに人の集まり方がどう変わるかを実測しました。
壁面の文言や照明の作り方は展示会ブースの装飾アイデアに、入口を塞がないレイアウトの組み方は1小間のレイアウトと造作の選び方にまとめたので、ブースづくりの段階でそちらをどうぞ。

声かけは、返事のできる問いかけで。 「いらっしゃいませ」「どうぞご覧ください」は、返事が要らないぶん流されやすい言葉です。「◯◯はいま、どうされていますか」のように、相手が答えられる問いを第一声にする。
来場者は、売り込みへの警戒が強いものです。受け答えの中で「◯◯を検討中の方なら、△△の比較ができます」のように、どういう方が聞くと得かをメリットの形で声に出すと、立ち止まる理由になります。
この第一声からの流れは、その場の各自任せにしないでください。トークスクリプトを用意して、事前に練習とシミュレーションまでやっておく。ここまで準備したチームと、していないチームでは、当日の成果に差が出ます。
配布物は、渡し方で受け取られ方が大きく変わります。 資料を「渡されそう」な雰囲気のブースは、それだけで避けて歩かれるものです。声も笑顔もなくカタログを差し出すだけでは、受け取る理由がないからです。
「受け取ると◯◯が分かります」と一言添えて、立ち話のきっかけとして渡す。呼び込みが得意なスタッフを通路側に立てるだけでも、ブースの空気は変わります。何を配るかの選び方は販促ツールの種類と選び方に書きました。
デモは、時刻を決めて予告する。 動いているものに人は寄ります。終日だらだら動かすより、「11時と14時にデモを行います」と掲示して山を作る方が、人だかりができやすい。人だかりそのものが、次の来場者を呼ぶ看板になります。
持ち場を分ける。 呼び込み係、説明係、そして話した内容をメモする記録係。全員が同時に商談へ入ると、ブースの前が無人になって次のお客さまを逃します。誰がどの持ち場に立ち、休憩をどう回すかは、イベント当日の運営体制のつくり方の考え方がそのまま使えます。
会期後のフォロー — 名刺は伸びる前に
集めた名刺は、そのままでは売上になりません。経験上、フォローの成果は「仕分ける」と「速く連絡する」の2つで大きく変わります。
ラーメンと同じで、名刺の束も時間を置くと伸びます。来場者は1日に何十社ものブースを回っているので、1週間もすれば、どのブースで何を話したかの記憶は混ざり始める。前掲のジェトロ資料でも、お礼状は会期後早々に送り、その場で即答できなかった質問への回答や追加資料は1週間以内に届けるとされています。
速く動くための仕込みは、会期中にあります。私たちが自社で出展したときは、いただいた名刺をその場で撮影し、話した内容を音声入力で残せるWebアプリを使いました。名刺と会話がセットで記録されていると、会期後に記憶を掘り起こす作業が要りません。
ここまでの仕組みがなくても、記録係が名刺の裏やリストに「話した内容・相手の温度感」をメモしておけば、会期後の仕分けは半日で終わります。メモのない名刺の山が、フォローを遅らせる一番の原因です。
仕分けは3段階で十分です。すぐ商談に進む相手、情報提供を続ける相手、挨拶止まりの相手。お礼のメールは全員同文にせず、この区分ごとに文面を変えて、すぐ商談の相手には営業から電話で訪問アポまで取りにいきます。
お礼の連絡には、会場で話した内容をひとこと織り込んでください。「◯◯にお困りとうかがった件ですが」の一行があるだけで、何十社も回った来場者の記憶から、自社のブースを思い出してもらえます。
相手の数が多いときは、AIで文面のたたき台を作り、人が中身を確認してから送る形が現実的です。ここでも、会期中のメモがそのまま材料になります。
AGSの展示会ブースづくり
AGSは展示会ブースの設計・施工を、図面・パースの作成から当日の建て込みまで一括で手がけています。ものづくりワールドの九州・東京・大阪、2025洗浄総合展、JASIS 2025など、LEDビジョンを組み込んだブースを中心に、展示会の現場を多数施工してきました。実例は制作実績でご覧ください。
遠目で目を引くブースは、事前集客の案内状や紹介ページに載せる「見どころ」にもなります。出展が決まってから会期までの段取り全体は展示会ブースの作り方にまとめました。拠点は福岡・博多、現場は全国。見積りは無料です。
よくある質問
Q. 案内状やメールは、いつ送ればいいですか?
会期の2〜3週間前に届くのが目安です。営業の個別アポはその前、1か月前あたりから動き始めてください。会期直前の1週間は相手の予定も埋まりがちで、返事をもらいにくくなります。
Q. 声かけが苦手なスタッフばかりです。どうすればいいですか?
第一声を1つ決めて、全員で同じ言葉を使ってください。うまい人の話術に頼るより、「◯◯はいまどうされていますか」のような答えやすい問いをトークスクリプトにして共有する方が、チーム全体の足が止まる率は安定します。呼び込み係と説明係を分けて、苦手な人を説明側に回すのも手です。
Q. 名刺は何枚集めれば成功と言えますか?
枚数だけでは測らない方がよいです。挨拶だけの100枚より、商談に進む10枚の方が出展の成果は大きい。目標は「名刺の枚数」ではなく「事前アポの件数」と「会期後に商談化した件数」で立てると、事前準備にも力が入ります。
Q. 当日のスタッフは何人必要ですか?
人数からではなく、持ち場から数えてください。呼び込み・説明・記録の3役が最低限で、1小間なら2人が常駐して1人が交代要員に入る形が現実的です。小間のスペースの制約は1小間のレイアウトで、持ち場の組み方は当日の運営体制のつくり方で書いています。
展示会の集客は、派手な仕掛けの勝負ではありません。案内を出す、約束を取り付ける、速く返す。この地味な連絡の積み重ねが、ブースの前の人通りを作ります。
まずは開催日をカレンダーに置いて、案内状の発送日と紹介ページの公開日を逆算で決めるところから始めてみてください。
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