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自治体のイベント企画|祭りの委託仕様書の実例と警察・消防の手続き

B_1245 イベント企画・運営
自治体のイベント企画|祭りの委託仕様書の実例と警察・消防の手続き

自治体のイベント企画は、「何のために開くか」と「終わったあとにどの数字を見るか」を最初に決め、そこから予算、委託の仕様書、警察や消防への手続きを逆算して進めると、途中で迷いにくくなります。

地域の祭りや観光イベントは、関わる人と窓口が多く、決めることが1年がかりでつながっているからです。予算は前の年度のうちに議会で決まり、委託先は開催の数か月前に選び、警察・消防・公園の管理者への手続きにはそれぞれ締切があります。

たとえば山梨県甲府市の「小江戸甲府の夏祭り」では、実行委員会が2025年8月11日の開催に向けて、4月に企画運営の委託先を公募し、5月に選んでいます。仕様書には、目標来場者数5万人、来場者数の計測、300人以上の来場者アンケート、次の年に向けた提案の提出までが書かれていました(出典:甲府市「第7回小江戸甲府の夏祭り関係業務<企画運営>公募型プロポーザルの実施について」の実施要項・仕様書・2026年10月12日確認)。

この記事では、市町村の観光課・商工課・地域振興課、観光協会、祭りの実行委員会の事務局の方に向けて、目的と数字の決め方、開催までの1年の流れ、直営と委託の分け方、仕様書に書くこと、警察・消防・公園の手続き、雑踏の安全、当日の運営、地域にお金を回す工夫、報告と翌年への引き継ぎまでを順にまとめました。実際の仕様書や公的機関の資料をもとに、ステージや会場の設営をしている会社の目線で書いています。自治会・町内会で開く行事については、自治会・町内会のイベント企画に分けてまとめました。

自治体のイベント企画は、目的と「終わったあとに見る数字」から決める

最初に決めるのは、イベントで何を変えたいかと、それを確かめる数字です。目的が「にぎわいの創出」のままだと、企画も予算も報告も「人がたくさん来た」でしか測れません。

目的によって、見る数字と数え方が変わります。下の表は、地域の祭りや観光イベントの目的ごとの例です。

目的見る数字の例数え方・確かめ方
地域の外から人を呼ぶ来場者数、市外・県外から来た人の割合来場者数の計測と、来場者アンケートの居住地
泊まってもらう宿泊した人の割合、市内に泊まった人の数来場者アンケートの宿泊の有無と宿泊地
地域でお金を使ってもらう出店者の売上、1人あたりの使った金額出店者アンケート、来場者アンケート
住民や地元の団体に参加してもらう出演・出店した地元の団体の数、ボランティアの人数申込の名簿

観光庁の『観光入込客統計に関する共通基準 調査要領』は、地域の観光消費額を「観光入込客数」×「観光消費額単価」で推計する考え方を示しています。消費額を増やすには、人数を増やすのか、1人あたりの単価を上げるのかを判断する、という整理です(出典:観光庁『観光入込客統計に関する共通基準 調査要領(令和5年改定版)』(PDF) 第1章・2026年10月12日確認)。祭りの目的に「地域でお金を使ってもらう」を入れるなら、来場者数だけでなく単価の側も見ておくと、翌年の打ち手を選びやすくなります。

祭りの会場の入口で、法被を着た実行委員の女性が来場者の家族にバインダーに挟んだアンケート用紙を手渡し、隣の男性スタッフが手元の数取器を押して入場者を数えている様子を、腰の高さから近めに写した写真

「観光イベント」でも、来場者の多くは近くから日帰りで来ることがある

目的を決める前に、前の回の来場者が実際にどこから来ているかを見ておくのがおすすめです。思っていた姿と違うことがあります。

甲府市の「小江戸甲府の夏祭り」の第6回(2024年8月11日)は、来場者4万5,000人、来場者アンケートの回答は251人でした。回答者の居住地は甲府市内が40.6%、甲府市外の山梨県内が43.8%で、県内が約85%を占めています。日帰りが86.9%、宿泊は12.7%でした(出典:甲府市の公募ページに掲載された「資料5 来場者アンケート 集計結果報告書」・2026年10月12日確認)。

この祭りは、山の日の三連休に帰省や旅行で人が動くことをきっかけに、交流人口を増やすことを目的にしています。目的と来場者の実際を並べてみると、「県外からの来場者を増やす」「宿泊につなげる」を次の目標にするなら、告知の届け先や夜の企画を変える必要がある、といった話がしやすくなります。

来場者数は、数え方を決めてから数える

来場者数は、入口が決まっていない屋外の祭りだと正確に数えにくい数字です。毎年同じ方法で数えておかないと、前の年と比べられなくなります。

観光庁の調査要領は、入口が限られる場所では人やセンサーで入場者を数える方法、駐車場の台数に車種ごとの平均乗車人数を掛ける方法、最も混む時間帯に会場を端から端まで歩いて数えた人数に回転数を掛ける方法などを挙げていて、最後の方法は行祭事・イベントにも使えるとしています(出典は上と同じ調査要領 第2章「観光入込客のカウント方法」)。どの方法で数えたかを報告書に書き残しておくと、担当者が替わっても同じ数え方を続けられます。

開催の何か月前に何を決めるか|予算から報告まで1年の流れ

自治体のイベントは、開催日から逆算すると準備が1年近くに及びます。とくに予算は前の年度のうちに決まるので、企画の大きな形はそこで固まります。

地方自治法では、自治体の予算は年度が始まる前に議会の議決を経ることになっています(地方自治法 第211条・2026年10月12日確認)。夏の祭りでも、委託料や会場の使用料の見積りは、前の年度に予算案を作る段階で必要になります。

市役所の会議室の壁に掛けたホワイトボードに、月ごとに縦の線で区切った欄が並び、色の違う付箋が工程ごとに横一列に貼られている様子を、正面やや斜めから写した写真。付箋には文字は書かれていない。手前の机に、閉じたファイルと卓上カレンダーが置かれている

下の表は、甲府市の夏祭り(8月11日開催)の実施要項・仕様書と、福岡市・福岡県警察・福岡市消防局の案内をもとに、開催までの流れを並べたものです。期限は自治体や会場で変わるので、自分の地域の窓口で確かめてください。

時期の目安決めること・出すもの例と出典
前の年度のうち翌年度の予算(委託料・使用料・保険など)の見積り予算は年度開始前に議会の議決(地方自治法第211条)
開催の約4か月前企画運営の委託先の公募甲府市の夏祭りは4月中旬に公告
約3か月前委託先の決定と契約甲府市はプレゼンテーション審査が5月22日、結果の通知が5月23日、契約は6月上旬の予定
約2か月前ポスター・パンフレット・のぼり旗の納品甲府市の仕様書はポスター6月13日、パンフレット6月30日の納品予定
1か月前まで公園で催しを開く許可の申請、警察署への道路使用の事前相談福岡市の公園の行為許可は原則1か月前まで。道路使用は十分な余裕をもって事前相談
数週間前ボランティアスタッフへの説明会甲府市は7月下旬の予定
14日前運営マニュアルの提出、大規模な催しの防火の計画の提出甲府市の仕様書はマニュアルを14日前までに提出。福岡市の「指定催し」は計画を14日前までに消防署へ
3日前火を使う露店の届出福岡市は開設の3日前までに消防署へ
開催後1か月半ほど実績報告書と、次の年に向けた提案甲府市の履行期間は9月30日まで

兵庫県西宮市の「にしのみや市民祭り」の第50回の記念イベントでも、協議会が4月30日に公募を始め、6月3日に企画提案を締め切り、6月13日のプレゼンテーションを経て、6月20日に契約の候補者を決めています(出典:にしのみや市民祭り「第50回にしのみや市民祭り 記念イベント企画運営業務に係る公募型プロポーザルの実施について」・2026年10月12日確認)。公募を始めてから委託先が決まるまでに、甲府市は約5週間、にしのみや市民祭りは約7週間かかっています。

直営か委託かは、来場者の規模と動ける職員の数で分ける

どこまでを職員や実行委員で運営し、どこからを外部に任せるかは、来場者の規模と、当日と準備期間に動ける人の数で決めます。来場者が増えるほど、警察・消防との協議や安全の体制が重くなるからです。

下の表に、規模ごとの分け方の目安をまとめました。一番下の行の「1日5万人」と「露店100店」は、兵庫県警察の『雑踏警備の手引き』と福岡市消防局の「指定催し」の要件に出てくる数字です。それより上の行の区切りは、会場の数と道路を使うかどうかで分けた目安で、法令などで決まった基準ではありません。警察や消防の実際の基準は都道府県警察や消防本部ごとに異なるので、地域の窓口で確かめてください。

規模の目安主な運営の形外部に頼む候補
数千人まで、会場が1か所職員と実行委員、地元の団体で運営ステージ・テント・音響の設営と撤去、看板やのぼり
1万〜5万人ほど、会場が複数か道路を使う企画運営を一括で委託し、職員は地元・関係機関との調整にまわる上に加えて、出店者の募集と管理、警備、告知物、来場者数の計測とアンケート
1日5万人以上か、露店が100店を超える警察・消防との事前協議を前提に、警備計画と防火の計画を作る上に加えて、雑踏警備の計画、救護、交通の案内

兵庫県警察の手引き(2002年作成)は、1日あたりの人出の予想が5万人以上で新しく開く行事や、会場や内容を大きく変える行事、1日10万人以上の行事について、警察署が県警本部と協議するとしています(出典:兵庫県警察『雑踏警備の手引き』第4章 p.38・2026年10月12日確認)。福岡市消防局は、1日10万人以上の人出が予想され、露店などが100店舗を超える屋外の催しを「指定催し」の対象にしています(出典は下の「手続き」の章の福岡市消防局のページ)。

市役所の会議室で、ジャケット姿の男性職員と女性職員が、向かいに座るイベント会社の担当の男性と、机に広げた会場の平面図をはさんで打ち合わせをしている様子を、窓側から横向きに目の高さで写した写真

甲府市の夏祭り(目標5万人)は、企画運営を一括で委託した例です。仕様書では、実行委員会のスタッフは原則として運営に配置しないとし、関係機関との協議や申請書類の作成、設営・撤去、警備員・看護師の手配、保険、来場者数の計測まで受託者の業務にしています。一方、来場者用の無料駐車場の確保とボランティアの募集は、実行委員会の側の仕事です(ボランティアが予定の人数に届かないときは、受託者も募って補います)。

一括で委託しても、目的と予算を決めること、地元の団体や住民への説明、委託先の仕事を確かめること、報告を受けて評価することは、自治体側の仕事として残ります。野球で、内野と外野の間に上がったフライを誰が捕るか決めていないとお見合いで落としてしまうように、直営と委託の境目の仕事は、どちらの担当かを表にして決めておくと、抜けを防げます。費用の内訳の考え方はイベント企画の費用の内訳9項目にまとめました。

委託の仕様書には、目標の数字・分担・安全・報告まで書く

委託の仕様書は、受託者が「何を、どこまで、どの水準で」やるかを決める書類です。目標の数字、役割の分担、安全と保険、終わったあとの報告まで書いておくと、提案も比べやすくなり、当日の抜けも減ります。

甲府市の夏祭りの仕様書は項目の立て方がそのまま参考になるので、主な項目を書いておく理由と一緒に並べます。

仕様書の項目甲府市の夏祭りの仕様書での書き方書いておく理由
目的とコンセプト山の日の三連休に交流人口を増やす。「小江戸」の城下町の雰囲気を楽しんでもらう提案の方向がそろい、審査で比べやすくなる
目標の数字目標来場者数5万人。企画ごとに見込みの来場者数を書かせる企画の大きさと予算の釣り合いを確かめられる
会場・時間・設営と撤去の日会場ごとの開催時間、設営日と撤去日、施設管理者の連絡先施設ごとの決まりを受託者が直接確かめられる
業務の範囲装飾、花火、集客企画、出店者の募集と出店者負担金の徴収、告知物の部数と納期、設営・撤去、清掃「やってくれると思っていた」をなくす
関係機関との協議県・公園の管理者・保健所・警察署・消防署との協議と、申請書類の作成締切のある手続きの担当をはっきりさせる
費用に含めるもの会場の使用料、電気・水道料は委託料に含める後から追加の請求になりにくい
人と保険警備員・看護師・ボランティアの手配、ボランティア保険、委託者名義の賠償責任保険事故のときの責任と補償の範囲を決める
運営の準備無線20台の配分、運営マニュアルを14日前までに提出、ボランティア説明会当日の連絡と判断の線をそろえる
測ること来場者数の計測(方法は協議)、300人以上の来場者アンケートと集計終わったあとに目的どおりだったかを確かめられる
報告と翌年実績報告書(資料・写真・電子データ)と、次年度に向けた提案担当が替わっても次の年に引き継げる
成果品の扱い成果品の著作権は委託者に帰属。のぼり旗は来年以降も使える素材で翌年に同じデザインや物を使い回せる

出典:甲府市の公募ページに掲載された実施要項・仕様書(2026年10月12日確認)。

会議室の長机の上に、ホチキスで留めた仕様書の冊子、色付きの付箋を貼った会場の平面図、蛍光ペン、電卓、ノートパソコンが置かれている様子を真上から写した写真。人の手が1本、付箋を図面に貼ろうとしている

委託先は、公募型プロポーザルで選ぶことが多い

企画の中身で委託先を選びたいときは、価格だけで比べる入札ではなく、提案書とプレゼンテーションで比べる公募型プロポーザルが使われます。

地方自治法 第234条(2026年10月12日確認)は、自治体の契約を一般競争入札・指名競争入札・随意契約・せり売りのいずれかで結ぶとし、一般競争入札以外を使えるのは政令で定める場合だけです。そのうえで、広島市「物品売買等に係る随意契約ガイドライン」(2026年10月12日確認)は、プロポーザル方式やコンペ方式で選んだ相手と結ぶ委託契約を、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号の随意契約の例に挙げています。手続きの細かい決まりは自治体ごとに違うので、契約の担当課に早めに相談しておくと安心です。

甲府市の夏祭りのプロポーザルは、提案上限額が1,495万円(税込)で、140点満点のうち技術点が135点、価格点が5点という配点でした。追加提案を除いて、提案書に書いた内容はすべて契約で実施する義務になると明記していて、技術点の平均が81点以上でないと選ばれない決まりもあります。参加資格には、甲府市内に本店か営業所があることや、国・自治体が発注した類似の業務の実績が入っていました(出典:甲府市の公募ページの実施要項・別紙1・別紙2)。にしのみや市民祭りの記念イベントは、委託上限額が1,500万円(税込)で、3者が参加し、200点満点で審査しています。

仕様書を書くときは、前の回の資料を公募の資料に付けておくと、提案が具体的になります。甲府市は、会場ごとの平面図と、前の回の来場者アンケート・出店者アンケートの集計を公募資料に付け、仕様書にも「アンケート結果を参考とすること」と書いていました。

警察・消防・公園の手続きは、会場図を1枚作ってから相談に回る

地域の祭りで主に必要になるのは、道路を使うときの警察署の許可、火を使う露店の消防署への届出、公園を使うときの管理者の許可の3つです。どの窓口でも会場図と人出の予想を聞かれるので、先に1枚の会場図を作ってから相談に回ると話が早く進みます。

手続き窓口締切・決まりの例(福岡の場合)
道路で祭礼行事やパレードをする(4号許可)、露店や屋台を出す(3号許可)、アーチや広告板を設ける(2号許可)道路を管轄する警察署(交通課)十分な余裕をもって事前相談。福岡県警察は手数料1申請2,400円、申請書は2部
コンロ・発電機・ホットプレートなど火を使う器具を置く露店所轄の消防署開設の3日前までに届出。消火器は原則として器具ごとに1本(業務用で検定マークのあるもの)
1日10万人以上が予想され、露店などが100店舗を超える屋外の催し(指定催し)消防署指定されると、防火担当者を決め、火災予防の計画を14日前までに提出
公園で催しを開く(行為許可)、テントなど仮設の工作物を置く(占用許可)公園の所在する区の区役所など行為許可は原則として使用開始日の1か月前まで
会場で調理した食べ物を出す開催地の保健所手続きと締切は保健所ごとに異なる。出店者と献立が決まった段階で相談

出典:警察庁「道路使用許可の概要、申請手続等」、福岡県警察「道路使用許可申請手続き」、福岡市消防局「多数の者の集合する催しにおける火災予防」、福岡市「占用許可申請、行為許可申請等」(いずれも2026年10月12日確認)。

道路に露店やアーチを置くときは、警察署の道路使用許可とは別に、道路管理者の道路占用許可が必要になる場合があります。福岡県警察の案内では、両方が必要なときは、申請書を警察署か道路管理者のどちらかの窓口にまとめて出せるとしています。

露店の届出と指定催しの制度は、消防庁が2014年に示した火災予防条例の例がもとになっています。2013年8月の福知山の花火大会の火災を踏まえたもので、指定催しの要件の露店の数は、地域の実情に応じてより小さな数にしてもよいとされています(出典:消防庁「改正火災予防条例(例)の運用について」(消防予第33号・平成26年2月7日)(PDF)・2026年10月12日確認)。自分の地域の消防本部が何店舗を基準にしているかは、窓口で確かめてください。

警察に相談に行くときは、聞かれることを先にそろえておきます。兵庫県警察の『雑踏警備の手引き』は、警察が行事の内容を早めに把握するため、主催者や関係者から聞き取る項目として、行事の内容(中止や延期の有無を含む)、連絡責任者と現場責任者、会場の構造と収容能力、来場者の層と最も混む時刻の人出の予想、輸送の計画、シャトルバスの有無、駐車場の台数と予想の台数、自主警備の体制、過去の状況、保険の加入を挙げています(出典は上の兵庫県警察の手引き 第4章 p.37〜38)。

芝生と舗装が広がる公園の広場で、作業着と帽子の職員2人が巻き尺を伸ばして通路の幅を測り、もう1人がクリップボードに書き留めている様子を、少し離れた位置から広角で写した写真。奥に公園の木立と、設営前で何も置かれていない広場が見える

会場図には、ステージ・テント・火を使う露店・本部・救護所・トイレ・ごみの集積場所・避難の通路と、道路を止める範囲を書き込んでおきます。この1枚を警察・消防・公園の管理者・保健所で共通に使うと、窓口ごとに図面を作り直す手間が減ります。道路使用の号の区分と装飾の関係は夏祭り・お祭りの装飾に、自治会の行事での保健所や保険の手続きは自治会・町内会のイベント企画に詳しく書いています。

雑踏の安全は、人が詰まる場所と時刻を図面の段階で読む

大勢が集まる祭りで一番避けたいのは、人が一か所に詰まって動けなくなることです。詰まりやすい場所と時刻は、会場図とプログラムからある程度読めるので、図面の段階で手を打っておきます。

兵庫県警察の『雑踏警備の手引き』は、明石市民夏まつり花火大会での雑踏事故を受けて、2002年に同県警察がまとめたものです。手引きは過去の国内の雑踏事故の共通点として、局所的に人の密度が高くなった場所で起きていることと、階段や橋のような逃げ場のない閉じた場所で起きていることを挙げています(出典:兵庫県警察『雑踏警備の手引き』第5章 p.71・2026年10月12日確認)。

夕暮れの祭りの会場で、提灯の下を来場者がゆっくり行き交う広い通路を、少し高い位置から見下ろすように写した写真。通路の中央に誘導用のロープとコーンが一列に並び、反射ベストを着たスタッフが2人、間隔を空けて立って手で進む方向を示している

詰まりは、安全の問題であると同時に、出店者の売上の問題でもあります。甲府市の夏祭りの第6回の出店者アンケートでは、回答した28店のうち11店が出店場所を「悪かった」と答えていて、理由には、店の前が狭くて人の流れが固まり、ほとんど売れない時間が数時間あった、ステージに近く人が多すぎて店の前に人がとどまり、販売できない時間が多かった、といった声がありました(出典:甲府市の公募ページに掲載された「資料6 出店者アンケート 集計結果報告書」・2026年10月12日確認)。翌年の第7回の仕様書には、飲食エリアが密にならないよう別の会場にも飲食エリアを設けること、注文と受け取りの列が通る人の往来を妨げないよう動線を工夫することが書かれています。

図面で確かめておきたいのは、ステージの前の観る場所と出店の列が重なっていないか、花火やメインの出演の時刻に人がどこへ動くか、階段・橋・駅への道のような細い場所に人が集中しないか、の3つです。ステージの位置と観る方向の決め方はステージ設営の流れと費用の考え方に、夏や秋の屋外での暑さや雷の中止の基準はスポーツイベントの企画にまとめています。

警備員は、警備業の認定を受けた会社に頼む

人や車が混み合う場所で事故を防ぐ仕事を、人から頼まれて行う場合は、警備業法の「警備業務」にあたります。外部の人に警備をしてもらうときは、認定を受けた警備業者に頼むことになります(警備業法 第2条・2026年10月12日確認)。

甲府市の仕様書も、花火は消防署や警察の指導により別に警備員の手配が想定されるとして、警備計画の作成と警備員の手配を受託者の業務にしていました。委託先がイベント会社の場合は、警備の部分を誰がどの会社に頼むのかまで、仕様書か打ち合わせで確かめておきます。案内スタッフと警備員の仕事の線引きはライブ・コンサートのスタッフ手配でも触れています。

保険は、来場者まで入るかを確かめる

自治体の市民活動の保険は、来場者のけがまでは入らないことがあります。千葉県船橋市の市民活動総合補償制度は、名簿などで把握されている活動の参加者が対象で、不特定多数の来場者は対象外とし、不特定多数が参加するイベントでは民間の行事保険への加入を勧めています(出典:船橋市「市民活動総合補償制度のご案内」(令和7年4月作成)(PDF)・2026年10月12日確認)。

甲府市の夏祭りの仕様書では、ボランティアスタッフ全員の保険、来場者と借りた施設に対する委託者名義の賠償責任保険、来場者の熱中症や食中毒に備える保険を、委託者と協議のうえで受託者が手配することにしていました。自分の自治体の保険が実行委員会の主催の行事に使えるかどうかも、担当課に確かめておくと安心です。

当日の運営は、本部・無線・中止の判断を先に決めておく

当日の運営で決めておくのは、本部の場所と責任者、連絡の手段、雨や暑さで中止するときの判断の流れです。ここが決まっていると、現場で何か起きたときに誰に連絡すればよいかで迷いません。

甲府市の夏祭りの仕様書では、本部用のテント2張、警備用1張、救護用1張を主会場に置き、受託者の業務の責任者を本部のテントに常駐させるとしています。無線は20台を手配し、各会場や駐車場、実行委員会のスタッフのほか、警察署にも1台を割り当てていました。運営マニュアルには、イベントの概要、タイムスケジュール、スタッフの配置表、会場のレイアウト、防火・事故の予防などの安全対策、緊急時の対応、責任者への連絡方法を入れるよう求めています。

祭りの本部テントの中で、法被を着た男性職員が無線機を口元に当てて話し、隣で女性スタッフが長机に広げた会場図を指さしている様子を、テントの入口から目の高さで写した写真。机の上には救急箱と充電中の無線機が並んでいる

雨については、少しの雨なら実施できる企画と、中止にする場合の対応を、提案の段階で示すよう求めていました。中止の判断は、誰が、何時に、何を見て決め、誰にどう伝えるかまで決めておくと、当日の朝に慌てずに済みます。持ち場の分け方と指示の出し方はイベント当日の運営体制の作り方にまとめています。

地域にお金と人が回り、来年も続けられる祭りにする

地域の祭りの目的が「地域の活性化」なら、来場者が地域の店や生産者にお金を使える仕組みと、職員や実行委員が来年も無理なく続けられる体制の両方が必要です。どちらかが欠けると、来場者は多くても次の年に続きにくくなります。

甲府市の夏祭りの第6回では、出店者46店のうち回答した28店で、当日の売上が30万円以上の店が8店、20万〜30万円が8店、10万〜20万円が7店、5万〜10万円が5店でした(出典は上の出店者アンケート)。同じ祭りの中でも場所によって売上に差が出ていて、前の章のとおり、出店の配置は売上にもそのまま響きます。

第7回の仕様書には、地域にお金が回るための書き方がいくつも入っています。

  • 酒類には甲府市や山梨県産のワインなどの地場産品を加える
  • 出店者を広く募集し、応募が多いときの選考基準を受託者が設けて、選び方に透明性を持たせる
  • 出店者には、現金のほかに電子決済への対応をできるだけ促す
  • 会場の外の中心街へ来場者を回遊させる企画があれば、追加で提案してもらう
  • 企業・団体からの協賛金を126万円以上集め、募集にかかる経費は協賛金の20%までにする
祭りの出店テントの軒先で、地元の野菜とワインのボトルを並べた台をはさみ、エプロン姿の店主の女性が来場者の男性に紙袋を手渡している様子を、台の高さから横向きに近めに写した写真。台の端には電子決済用の無地のQRコードの立て札が置かれている

続けやすさの面では、毎年作り直さなくてよい物を増やしておくと、予算も準備の手間も軽くなります。甲府市の仕様書は、のぼり旗を来年以降も使い続ける前提で長く使える素材にし、祭りのシンボルになるデザインにするよう求めていました。

告知の手段も、前の回の結果から選べます。第6回の来場者アンケートで祭りを知ったきっかけは、ポスター・チラシが26.3%、甲府市のホームページが24.7%、友人知人の誘いが19.9%、市の広報紙が12.4%でした(出典は上の来場者アンケート)。告知の手段ごとの届く相手と締切はイベントの告知方法10選にまとめています。

終わったあとは、報告書と一緒に翌年の担当者への引き継ぎを残す

祭りが終わったら、目的に対して何が起きたかをまとめた報告と、次の担当者がそのまま使える資料を残します。毎年続く行事は、担当が替わっても前の年の判断の理由がたどれるかどうかで、翌年の準備の速さが変わります。

甲府市の夏祭りの仕様書は、実績報告書として、業務の資料・記録写真・報告書の一式を電子データと印刷物で提出させ、あわせて開催内容を検証した次年度への提案も出させています。前の章のとおり、第6回のアンケートの集計は、第7回の公募資料に付けられていました。

観光庁の調査要領では、都道府県が観光地点や行祭事・イベントの来場者数を、その実施者などに報告してもらって集計する仕組みになっています(出典は上と同じ調査要領 第1章)。来場者数を報告するときに数え方も一緒に書いておくと、統計の上でも前の年と比べやすくなります。

庁舎の事務室の机の上で、職員の手が、写真をプリントした紙や会場図、アンケートの束をクリアファイルに分けて、背に何も書かれていないファイルボックスに入れている様子を、斜め上から写した写真

引き継ぎの資料として残しておきたいのは、次のようなものです。

  • 仕様書と、選ばれた提案書、評価の結果
  • 警察・消防・公園の管理者・保健所に出した申請の控えと、使った会場図
  • 関係機関に、いつ、誰に、何を相談し、何を指導されたかの記録
  • 来場者数と、その数え方
  • 来場者アンケートと出店者アンケートの集計、自由記述の声
  • 出店者と協賛者の一覧、負担金と協賛金の額
  • 当日の写真と、トラブルやヒヤリとした場面の記録
  • 次の年に変えたいことと、その理由

目的と見る数字、開催までの流れ、直営と委託の分担、仕様書に書く項目、手続きの窓口と締切、安全の体制、終わったあとの記録と引き継ぎを、1冊にまとめて書き込めるシートを用意しました。企画の初めに庁内の協議や委託先との打ち合わせで使い、そのまま翌年の担当者への引き継ぎ資料にしてください。

AGSでお手伝いできること

私たちAGSは、福岡を拠点に、イベントの企画からステージ・テント・装飾・看板の設営、当日の運営スタッフまでをお手伝いしています。地域の祭りでは、博多どんたくの演舞舞台(天神地下街)を、人通りのある会場で安全に配慮して設営しました。中洲まつりでは、看板を兼ねたステージのバックパネルを制作・施工しています。

日中の公園の広場で、作業着の施工スタッフ2人が、組み上げ途中の仮設ステージの骨組みに床の板を据え付けている様子を、地面に近い低い位置から見上げるように写した写真。背後には設営前のテントの骨組みと青空が見える

ステージや会場の設営の相談はステージ設営・レンタルのページから、企画や当日の運営を含めた相談はイベント企画・運営のページからどうぞ。会場図の段階で、ステージの位置や観る場所、出店の列の配置を一緒に考えることもできます。拠点は福岡・博多ですが、現場は全国に伺います。見積りは無料です。

よくある質問

Q. 異動で祭りの担当になりました。最初に何を見ればいいですか?

前の年の実績報告書、仕様書と選ばれた提案書、関係機関に出した申請の控えと会場図、来場者と出店者のアンケートの集計を、まず集めるのがおすすめです。そのうえで、今年の目的と見る数字が前の年と同じでよいかを、上司や実行委員会と確かめてから準備を始めると、途中で方針が揺れにくくなります。

Q. 委託先を選ぶプロポーザルは、開催の何か月前から準備すればいいですか?

甲府市の夏祭り(8月11日開催)は4月中旬に公募を始めて5月下旬に選考結果を出し、にしのみや市民祭りの記念イベントは4月30日に公募を始めて6月20日に候補者を決めています。公募から選定までに1か月余りから2か月近くかかるので、仕様書を作る期間も含めると、開催の5〜6か月前には準備を始めておくと余裕があります。委託料の予算は、前の年度のうちに見積もっておきます。

Q. 警備は、委託したイベント会社に任せれば大丈夫ですか?

人や車が混み合う場所で事故を防ぐ仕事を人から頼まれて行う場合は警備業法の警備業務にあたり、外部に頼むときは認定を受けた警備業者が行います。イベント会社に一括で委託する場合も、警備計画を誰が作り、警備員をどの会社に頼むのかを、仕様書や打ち合わせで確かめておいてください。人出が多い行事は、早めに警察署に相談します。

Q. 屋外の祭りの来場者数は、どうやって数えればいいですか?

観光庁の調査要領は、入口が限られる会場なら人やセンサーで数える方法、駐車場の台数に平均の乗車人数を掛ける方法、最も混む時間帯に会場を歩いて数えた人数に回転数を掛ける方法などを挙げています。どの方法でもかまいませんが、毎年同じ方法で数え、報告書に数え方を書いておくことが大切です。

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