「看板の点検って、誰がやるものなんですか」というご相談をよくいただきます。看板の持ち主(広告主か建物の管理者)が日常的に見るのが基本で、目安は年1回程度です。それとは別に、屋外広告物の許可を更新するときには、点検した結果を自治体に出します。この2本立てが、いまの看板管理の基本形です。
点検が求められるようになった理由は、落下事故です。2015年2月に札幌市で、ビルの外壁に付いていた看板の一部が落ちて、歩いていた方の頭に当たる事故が起きました。これを受けて国土交通省が全国の自治体に安全点検を求め、翌年には条例のひな形も改正されています。
札幌市の報告では、看板が落ちる前に取り付け部品が先に落ちていたのに対応がなく、点検も目視だけだったことが原因に挙げられています。兆候はあったのに、見逃された事故でした。
この記事では、看板の点検を誰がいつやるのか、国の指針にある確認項目を店の前から見て分かる形に言い換えた一覧、自分で見てよい範囲と業者に頼む範囲、許可更新で要るもの、異常が見つかったときの対応をまとめました。看板の製作・施工と、他社が付けた看板の点検・修理もしている会社の目線で書いています。
看板の点検は誰が、いつやるのか
看板の点検は、持ち主が年1回程度の日常点検を続けて、許可更新のときに業者や有資格者の点検結果を自治体に出す、という形が基本です。ただし細かい決まりは自治体の条例で違うので、看板のある市区町村のルールを一度確かめてください。
責任を持つのは看板の所有者か管理者で、実際に手を動かすのは、地上からの目視なら持ち主、高いところや部品の確認は看板業者、という分担です。
| 点検の種類 | 誰がやる | いつやる | 何をする |
|---|---|---|---|
| 日常の点検 | 看板の持ち主(広告主・建物の管理者) | 年1回程度が目安。台風や強風のあとにも | 地上から目視で異常を探し、気になる点を写真に残して業者に伝える |
| 業者による点検 | 看板業者・有資格者 | 日常点検で気になる点が出たとき。高い看板や古い看板は定期的に | 高所で近づいて目視・打診(たたいて音で確かめる方法)、ボルトの緩みの確認、必要なら締め直しや補修 |
| 許可更新時の安全点検 | 自治体が定める点検者(有資格者に限る自治体もある) | 屋外広告物の許可を更新するとき | 点検結果を報告書にして自治体へ提出する |
年1回という目安は、国土交通省の指針(案)に「許可更新時に所有者等に求めている安全点検とは別に、所有者等に実効性のある点検を年1回程度実施させることが望ましい」と書かれているのが根拠です(出典:国土交通省「屋外広告物の安全点検に関する指針(案)」・2026年9月12日確認)。
自治体によっては、この点検を条例で義務にしているところもあります。たとえば長野県では2017年10月から、はり紙・立看板類などを除くすべての屋外広告物について、設置したときとその後3年以内ごとの点検が義務になりました。
高さ4メートルを超える看板の点検は、屋外広告士(屋外広告物の設計・施工に関する専門資格)・建築士・電気工事士などの有資格者か、知事が認めた講習の修了者に限られます(出典:長野県「屋外広告物の安全点検の義務化について」・2026年9月12日確認)。
福岡市は、許可関係の書類として「屋外広告物安全点検確認書」の様式を用意しています(出典:福岡市「屋外広告物許可関係書類」・2026年9月12日確認)。福岡市で許可を受けている看板なら、更新のときにこの書類が要る、と覚えておくと段取りが組みやすいです。
看板の種類ごとの特徴や、そもそも許可が要るかどうかの考え方は看板の種類と選び方にまとめています。
なぜ点検が要るのか|札幌の事故と国の動き
点検が求められる一番の理由は、看板が落ちると人に当たるからです。看板は歩道の真上に張り出していることが多く、落ちる先に人がいます。
2015年2月15日、札幌市中央区の飲食店ビルで、壁面の突出看板(壁から通りに向かって突き出す看板)の一部が地上15メートルから落ちて、通行中の女性の頭部に直撃しました。
札幌市は主な原因として、看板が落ちる前に取り付け部品が落ちていたのに必要な対応をしていなかったこと、管理者の点検が「目視」だけだったことを挙げています(出典:札幌市「看板落下事故の概要及び札幌市の対応について」・2026年9月12日確認)。
国の動きは早く、事故の2日後には国土交通省が都道府県を通じて全国の広告板の調査を通知しています。看板を外壁に固定する部分が腐食して強度が落ち、強風で落下した可能性がある、という見立てでした(出典:国土交通省 報道発表「広告板の調査について」・2026年9月12日確認)。
翌2016年4月には屋外広告物条例のガイドライン(案)が改正され、所有者による点検の促進と、許可更新などの申請をするときの点検結果の提出が盛り込まれました。あわせて「オーナーさんのための看板の安全管理ガイドブック」もまとめられています(出典:国土交通省「屋外広告物の安全点検に関する指針(案)」・2026年9月12日確認)。
その後も事故はなくなっていません。福岡市は、2021年12月に大分市で看板の支柱が折れて落下した事故を受けて、設置から長期間が経って老朽化した看板は速やかに除却・改修などの措置をとるよう呼びかけています(出典:福岡市「屋外広告物の安全性の向上について」・2026年9月12日確認)。
業界側も同じ事故をきっかけに動いていて、日本屋外広告業団体連合会などの業界団体が点検基準と報告書の様式を自主基準として作りました。屋外広告物点検技能講習の修了者を点検の資格者として位置づける自治体もあり、修了者は2025年12月時点で約9,300人です(出典:一般社団法人日本屋外広告業団体連合会「安全管理/点検アイテム」・2026年9月12日確認)。
落下を防ぐ確認項目|店の前から見て分かること
確認する場所は、根元・骨組み・壁との接点・表示面・照明・付属品の6つです。国土交通省の指針(案)に点検箇所と項目の一覧があるので、それを「店の前に立って見たときに、どう見えるか」に言い換えてみます。
| 見る場所 | 指針(案)の点検項目 | 店の前からはこう見える |
|---|---|---|
| 基礎・支柱(自立看板の根元) | 全体の傾き・ぐらつき、基礎のクラック、支柱と根巻きの隙間、鉄骨のさび・塗装の老朽化 | 看板が傾いて見える。根元のコンクリートにひび。根元に赤茶色のさび汁が流れた跡がある |
| 支持部(骨組み) | 鉄骨の接合部の腐食・変形・隙間、ボルト・ナット・ビスのゆるみ・欠落 | 骨組みのつなぎ目がさびている。ボルトの頭が抜けている。足元に部品が落ちていた |
| 取付部(壁との接点) | アンカーボルトやプレートの腐食・変形、溶接部の劣化、コーキングの劣化、壁側の異常 | 壁との境目に隙間がある。取付位置の周りの壁にひび。コーキングが切れて黒ずんでいる |
| 広告板(表示面) | 表示面や切り文字の腐食・破損・変形・ビスの欠落、押さえ枠のねじれ・欠損、底部の腐食・水抜き孔の詰まり | 面板が浮いている。文字が1つだけ傾いている。枠が波打っている。底に水がたまってさびている |
| 照明装置 | 不点灯・不発光、取付部の破損・さび・漏水、分電盤・配線・変圧器・スイッチの劣化 | 一部だけ消えている・ちらつく。器具の下に水の跡。配線がむき出しになっている |
| 付属部材 | 装飾・振れ止め棒・鳥よけなどの腐食・破損、避雷針の腐食・損傷 | 飾りが風で揺れる。鳥よけが外れかけている。細い棒が曲がっている |
指針(案)の点検項目と、点検の方法が原則として目視・打診であることは、上の国土交通省の資料に載っています(出典:国土交通省「屋外広告物の安全点検に関する指針(案)」・2026年9月12日確認)。
この表で大事なのは、表示面より「壁との接点」と「骨組み」の方を先に見ることです。通りを歩く方が見ているのは表示面ですが、落下につながるのは多くの場合、裏側の金物です。表示面がきれいでも、取付部のさびは進みます。
キャンプのテントも、張った直後より風を受けたあとにペグとロープを見に行くのと同じで、看板も強風のあとが見どころです。台風の翌日に一度、店の前から見上げてみてください。
袖看板(突出看板)が特に傷みやすい理由
壁から突き出す袖看板は、風をまともに受けるうえに、取付金物を覆うカバーの中に雨水がたまりやすい構造です。国土交通省の指針(案)でも、突出看板は風圧を受けやすく、ブラケットカバー内に水が滞水して腐食しやすい、経年劣化しやすい看板として挙げられています(出典:国土交通省「屋外広告物の安全点検に関する指針(案)」・2026年9月12日確認)。
カバーの中は外から見えません。なので袖看板は、表から見て異常がなくても、設置から年数が経っていれば一度カバーを開けて中を見る点検をおすすめします。札幌の事故で落ちたのも、この突出看板でした。
上の表を紙にして、店の前で看板を見上げながらチェックできるシートを用意しました。気になる欄をそのまま業者への連絡メモにできます。
自分で見てよい範囲と、業者に頼む範囲
地上からの目視と写真の記録は持ち主が自分でやって、高いところ・部品の確認・電気は業者に頼む、という線引きが実務的です。判断の軸は「脚立に乗らずにできるか」と「触って確かめる必要があるか」の2つです。
自分でやる範囲
地上に立って看板を見上げ、上の表の右の列に当てはまるものがないかを探します。傾き、さび汁の跡、隙間、面板の浮き、消えている照明。この5つは、慣れていない方でも見つけやすいです。
見つけたら、スマホで写真を撮っておいてください。同じ位置から撮った前回の写真と比べると、さびが広がっているか、隙間が大きくなっているかが分かります。点検は1回の結果より、変化を追う方に意味があるんです。
足元も見てください。看板の真下にビスやプレートの欠片が落ちていたら、上で何かが外れかけているサインです。札幌の事故は、まさにこの「部品が先に落ちていた」段階で止められる可能性がありました。
業者に頼む範囲
脚立や高所作業車に乗らないと近づけない看板、ボルトの緩みをたたいて確かめる打診、緩んだボルトの締め直し、照明や配線の確認は、業者の仕事です。

高所での作業は、看板そのものより人の安全の問題です。2階より上の袖看板や屋上看板は自分で見に行かず、道具と段取りを持っている会社に任せてください。
電気が通る看板は、照明が消えているだけに見えても、漏水で器具の中がさびていたり、配線が傷んでいたりします。ここは電気工事の資格を持つ人の領分なので、持ち主が器具を開けることはおすすめしません。
もう1つ、許可更新のための点検は、自治体によって点検者の資格が決められています。長野県のように高さで有資格者を指定している場合、自分で点検しても報告書として受け付けてもらえないことがあります。
これが出ていたら、すぐ連絡
次のサインは、次の点検日を待たずに業者へ連絡してほしいものです。
- 看板の下に部品(ビス・ナット・金物の欠片)が落ちていた
- 看板が明らかに傾いている、または風で揺れて音がする
- 壁と看板の間に指が入るほどの隙間がある
- 面板や文字が浮いていて、風でばたつく
- 照明の器具から水が垂れている、焦げたにおいがする
このうち「部品が落ちていた」と「揺れて音がする」は、落下が近い可能性が高い状態だと考えてください。連絡と同時に、看板の真下を通らないよう案内板やコーンで一時的に区切っておくと安心です。
許可更新と点検報告で要るもの
許可更新のときに出す安全点検の報告書には、点検した人の氏名と資格、点検結果、看板の全景写真が要ります。国土交通省の指針(案)の報告書様式に、点検者の氏名・資格名称の欄と全景写真の欄があるためです(出典:国土交通省「屋外広告物の安全点検に関する指針(案)」・2026年9月12日確認)。
様式や提出の決まりは自治体ごとに違い、福岡市なら「屋外広告物安全点検確認書」、長野県では点検の記録を看板の撤去まで保管する決まりです。看板のある自治体の様式を先に確かめてから業者に頼むと、二度手間になりません。
設置したときの資料が無いとき
古い看板ほど、設置時の図面や許可証が手元に残っていないことが多いです。前のオーナーから店を引き継いだ場合や、施工した会社が分からない場合は特にそうなります。
資料が無くても点検はできます。業者が現地で看板の寸法・取付方法・状態を確認して、そこから報告書を起こす形です。許可そのものの有無や許可番号は、自治体の窓口で看板の場所を伝えれば調べてもらえることが多いので、まず窓口に聞いてみてください。
管理者が変わったときの届出
店を引き継いだ、管理会社が変わった、という場合は、看板の管理者が変わったことを自治体に届け出る手続きがあります。福岡市では「屋外広告物管理者等変更届」の様式が用意されています(出典:福岡市「屋外広告物許可関係書類」・2026年9月12日確認)。
管理者の届出が前の持ち主のままだと、自治体からの点検の案内や更新の通知が届きません。引き継ぎのときに、看板の許可と管理者の届出を確認事項に入れておくと安心です。
異常が見つかったらどうするか
対応は、直して使い続けるか、撤去するかの2択です。国土交通省も自治体も、老朽化して倒壊や落下のおそれがある看板は速やかに撤去・改修するよう求めています。
どちらにするかは、看板の状態と、これからどれくらい使うかで決めるのが基本です。
骨組みや取付部の腐食が進んでいる看板を、表示面だけ貼り替えて使い続けるのは順番が逆です。見えない金物を先に直してから、見える表示面に手を入れてください。
直して使い続ける場合
ボルトの締め直しや交換、さびた部分の防錆処理と再塗装、コーキングの打ち替え、傷んだ面板の交換が主な補修です。照明が切れた電飾看板は、この機会に照明をLEDに替える選択肢もあります。消費電力と球切れの頻度を抑えられます。
表示面が色あせているだけなら、面板やシートの貼り替えで見た目は戻ります。シートの貼り替えについてはカッティングシート施工は業者とDIYで何が違うかで詳しく書きました。
撤去する場合
閉店や移転、看板自体が古すぎて補修より作り直しの方が現実的な場合は、撤去と処分になります。撤去のあとに壁のアンカー穴を埋める補修と、許可の廃止の届出が必要になることがあるので、撤去を頼むときにあわせて確認してください。
他社が付けた看板でも頼めます
「付けた会社がもう無い」「どこに頼んだか分からない」という看板でも、点検・修理・撤去は別の看板業者に頼めます。AGSも、他社が製作・施工した看板の点検、電球交換、LED化、表示面の貼り替え、撤去処分まで対応の範囲です。
点検・修理の金額は何で動くか
点検や修理の金額は、看板の大きさより「どこまでやるか」と「高さ」で動きやすいです。目安の金額は現場の条件でかなり変わるので、ここでは何が金額を動かすかだけを整理しました。
| 金額を動かす要素 | 何に効くか |
|---|---|
| 看板の高さ・設置場所 | 高所作業車や足場が要るかどうか。道路上の作業なら交通の規制も |
| 点検の範囲 | 地上からの目視だけか、近づいて打診・ボルト確認までか、カバーを開けて中を見るか |
| 看板の数と大きさ | 1棟に複数ある場合は、まとめて点検する方が1枚あたりの手間は下がる |
| 報告書の作成 | 許可更新用に有資格者の報告書が要るかどうか |
| 補修の内容 | 締め直しだけか、部材の交換・再塗装・面板の交換まで行うか |
| 現場までの距離 | 出張の費用 |
看板の写真(正面と、取付部が見える斜めからの2枚)と、おおよその高さ、許可更新の予定があるかを伝えていただければ、点検の範囲と概算はだいたい決まります。
AGSの看板点検・修理
AGSは看板・サインの製作・施工を手がけていて、既設の看板の点検・修理もその一部としてお受けしています。福岡市屋外広告業登録(第2231449号)を受けた事業者です。
流れは「ご相談 → 現地調査 → 点検結果と補修のご提案・お見積り → 補修」の4段階です。現地調査とお見積りは無料で、設置時の資料が残っていない看板でも、現地を見たうえでご提案します。
新しく作る看板のご相談ももちろんお受けしています。これまでに店舗の街頭看板、新規店舗の自立看板、商業施設のタワーサインなどを施工してきました。ほかの実例は制作実績でご覧いただけます。
拠点は福岡・博多ですが、現場は全国です。看板の写真を1枚送っていただければ、そこから話は始まります。
よくある質問
Q. 点検をしないと罰則はありますか?
点検の義務や罰則の有無は、看板のある自治体の条例で決まっていて、全国一律ではありません。長野県のように点検を義務にしている自治体もあれば、努力義務にとどめている自治体もあります。まず看板のある市区町村の担当課に「点検の義務と、許可更新のときに出す書類」を確かめてください。
罰則の有無にかかわらず、落下で人がけがをすれば所有者や管理者の責任が問われる可能性があります。私たちは、点検は義務だからやるものというより、お店の前を通る方を守るためのものだと考えています。
Q. 看板の持ち主が自分で点検してもいいですか?
地上からの目視と写真の記録は、持ち主が自分でやって問題ありません。年1回の日常点検は、持ち主がやることが前提です。
ただし、高いところに登る点検と、許可更新のために自治体へ出す報告書は別です。点検者の資格を決めている自治体があるので、更新用の点検は看板業者か有資格者に頼んでください。
Q. 設置した会社が分からなくても点検を頼めますか?
頼めます。設置した会社に関係なく、看板業者は他社施工の看板も点検・修理できます。設置時の図面が無くても、現地で寸法と取付方法を確認すれば報告書は起こせるので、心配は要りません。
Q. テナントで借りている店舗の看板は、誰が点検するのですか?
看板の所有者と管理者が誰かは、賃貸借契約や建物の管理規約で決まっていることが多いです。自分で付けた袖看板は自分、建物に元から付いているファサード看板や共用の案内サインはオーナーや管理会社、というケースが一般的です。まず契約書と管理会社に確認して、責任の所在をはっきりさせておいてください。
看板は付けたときが一番きれいで、そこから風と雨で少しずつ傷んでいきます。札幌の事故のように、落下の前にはさび・隙間・落ちた部品という兆候が出ていることが多いです。
年に1回、店の前から看板を見上げて、気になるところを写真に撮っておいてください。それだけで、事故の芽はかなり早く見つけられます。見上げて「あれ?」と思ったら、写真を添えてご相談ください。
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お見積り・ご相談は無料です。「こんなことできる?」からで構いません。